周囲の基地局や端末との関係に基づき基地局のスリープ制御をする特許発明 ATR NEC通信システム

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 従来、複数の基地局(アクセスポイント)で領域をカバーするとき、必要最小限の基地局のみ稼働する状態にできないという問題がありました。

 この発明では、4つの条件を用いて決定した必要最小限の基地局を稼働させ、それ以外をスリープさせます。これにより無線通信システムでの基地局の消費電力を低減させる効果があります。

 特許第5789462号(特開2013-70273) 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 日本電気通信システム株式会社
 出願日:2011年9月22日 登録日:2015年8月7日

必要最小限の基地局のみ稼働する状態にできない問題

 従来、複数の基地局で所定の領域をカバーする場合、カバー範囲を保持したまま余分な基地局をスリープさせる技術がありました。しかし、通信端末は、この所定の領域のうちの1つの位置に存在しているので、カバー範囲を維持したまま一部の基地局をスリープさせるだけでは、稼働する基地局が必要最小限のもののみにならないという問題がありました。

 言い換えれば、この状態は、必要最小限より多くの基地局が稼動している状態であり、さらにスリープさせることができる基地局が存在しているのに、スリープさせることができていない状態といえます。

4つの条件を用いて必要最小限の基地局を決定することで解決

 本発明では、請求項1に記載されている4つの条件(処理)を用いて必要最小限の基地局を決定します。具体的には、(1)端末装置との間で唯一の無線通信リンクのみを有する基地局を稼動基地局とする、(2)稼動基地局とした基地局に接続可能である端末装置の稼動基地局以外の基地局とのリンクをリンク情報から削除する、(3)端末装置との間で無線通信リンクを持たない基地局をスリープ基地局とする、及び(4)端末装置との間で最も多くの無線通信リンクを有する基地局を稼動基地局とする、という処理を実行します。

 そして、稼働基地局と決定された基地局を稼働させ、スリープ基地局と決定された基地局をスリープさせるよう制御します。

 なお、スリープモードでも通信端末からの信号を受信できるように、低消費電力(例えば100μW)で動作可能なウェイクアップ装置を基地局の内部に備えている点もおもしろい技術的特徴とである思います。

【課題】
無線通信システム内に存在する全ての端末装置の起動している基地局への接続を確保するための必要最小限の基地局を決定可能な制御装置を提供する。
【請求項1】
 無線通信システム内に存在するM(Mは2以上の整数)個の基地局のうち、K(Kは2以上の整数)個の端末装置によってウェイクアップされたm(mは、1≦m≦Mを満たす整数)個の基地局から前記m個の基地局が起動したことを示す起動信号、または接続要求を受信したことを示す接続要求信号を受信する受信手段と、
 前記K個の端末装置が接続可能な基地局を示す接続可能リストと、前記K個の端末装置におけるK個の受信信号強度と、各端末装置が要求する最低の送信速度であるK個の要求最低速度とを記憶する記憶手段と、
 前記起動信号または前記接続要求信号に応じて、前記接続可能リスト、前記K個の受信信号強度および前記K個の要求最低速度に基づいて、前記K個の端末装置の全てが自己の前記要求最低速度にできる限り近い送信速度で前記m個の基地局のいずれかと無線通信を行うための前記m個の基地局と前記K個の端末装置との接続関係を示すリンク情報を作成する作成手段と、
 前記作成手段によって作成された前記リンク情報に基づいて、任意の1つの端末装置である第1の端末装置との間で唯一の無線通信リンクのみを有する基地局を稼動基地局とする第1の条件、稼動基地局とした基地局に接続可能である端末装置の前記稼動基地局以外の基地局とのリンクを前記リンク情報から削除する第2の条件、端末装置との間で無線通信リンクを持たない基地局をスリープ基地局とする第3の条件、および端末装置との間で最も多くの無線通信リンクを有する基地局を前記稼動基地局とする第4の条件を順次実行するとともに前記第2から第4の条件を繰り返し実行して、前記m個の基地局から前記稼動基地局と前記スリープ基地局とを決定する決定手段と、
 前記決定手段によって前記稼動基地局と決定された基地局が稼動し、前記決定手段によって前記スリープ基地局と決定された基地局がスリープするように前記m個の基地局を制御する制御手段とを備える制御装置。

今日の見どころ

 従来さまざまな機器で消費電力を低減させる技術が検討されています。そのような機器の中でもアクセスポイントは、通信相手である通信端末からの接続を待ち受ける必要があるので、自装置の都合だけでスリープ状態に入るのが難しいという問題をもっています。そこで本発明では、他のアクセスポイントと情報をやりとりすることで、他のアクセスポイントの関係をうまく利用してスリープ状態に遷移するかどうかを決定する点が特徴になっています。

 必要最小限の基地局を決定するための具体的な4つの条件が請求項1に示されているので、請求項1を読むだけで大体の処理の方向性をつかむことができます。また、明細書の記載及び図面(表、処理フロー、解説図)がかなり充実していると思います。これらの点は審査でも有利に働いたのではないかと推察します。

 なお、請求項1に記載された「条件」の文言は、実行する処理を意味していると思われましたので、「処理」のほうが適切なのではないかと思いました。