配信サーバとキャッシュを使い分けて番組コンテンツを取得する発明 NHK

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 放送波と通信との両方を用いてコンテンツを受信する放送通信連携受信端末(テレビに相当)に関する発明です。
 この受信端末は、現在放送中の番組コンテンツ、又は、過去に放送された番組コンテンツを取得することができます。受信端末は、過去に放送された番組コンテンツを取得するときのアクセス先を、受信端末の外部のサービスサーバか、受信端末内のキャッシュメモリかに切り替えます。具体的には、サービスサーバからの番組コンテンツの配信が可能であるときにはサービスサーバをアクセス先にし、そうでないときにはキャッシュメモリをアクセス先にします。これにより、放送と通信という異なる伝送路から配信されるコンテンツを伝送路の違いをユーザに意識させずに視聴させることができます。いわゆるVOD(ビデオ・オン・デマンド)に関する発明です。

 特許第5843481号(特開2012-244481) 日本放送協会
 出願日:2011年5月20日 登録日:2015年11月27日



 ※特許の本の紹介。
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放送波で伝送できるデータ量に制限

 現在放送されている番組コンテンツを放送波により受信すること、及び、過去に放送された番組コンテンツを通信により受信することができる放送通信連携受信端末に関する発明です。一般に、放送波でリアルタイムに送信可能なデータ容量には制限があります。そこで、その制限を回避すべく、放送とは異なる伝送路である通信によってデータを受信することで、その制限を回避することが検討されています。特に、放送と通信という異なる伝送路から配信されるコンテンツを、伝送路の違いをユーザに意識させずに視聴させることが求められています。

コンテンツを配信するサーバ、又は、キャッシュメモリから番組コンテンツを取得

 この発明の受信端末は、アプリケーション管理情報が含まれた(多重化された)放送波を受信します。アプリケーション管理情報とは、過去に放送された番組コンテンツをサーバから配信することができるか否かを示す情報です。
 また、受信端末は、放送波に含まれる番組コンテンツを放送波から分離してキャッシュメモリ(保持手段)に保持します。
 そして、過去の番組コンテンツが再生対象である場合、アプリケーション管理情報に基づいて再生対象の番組コンテンツをサーバから配信することができると特定されるときには、サーバをアクセス先とします。一方、再生対象の番組コンテンツをサーバから配信することができないと特定されるときには、キャッシュメモリをアクセス先とします。番組が放送されてから数分間は、この番組がサーバにアップされていない可能性があるためキャッシュメモリを使うようにしているようです。

【課題】
放送と通信という異なる伝送路から配信される複数のコンテンツを、その伝送路の違いをユーザに意識せずに視聴させる。
【請求項1】
 放送波により、放送局から現在放送されている番組コンテンツを受信するとともに、ネットワークを介する通信により、過去に放送された番組コンテンツをサーバから受信する放送通信連携受信端末であって、
 前記放送波による番組コンテンツを受信する放送波受信手段と、
 前記通信による番組コンテンツを、前記サーバから前記ネットワークを介して受信する通信手段と、
 再生対象のアクセス先を、前記放送波受信手段と、前記通信手段に前記ネットワークを介して接続された前記サーバとの中から選択する番組アクセス手段と、
 再生対象の番組コンテンツの取得の経路を、前記番組アクセス手段により選択された前記アクセス先に切り替え、切り替えた前記アクセス先から前記番組コンテンツを取得する経路切替手段と、
 前記経路切替手段により取得されて再生された前記番組コンテンツを出力する出力手段とを備えており、
 前記放送波には、前記番組コンテンツに対して、前記番組アクセス手段を機能させるアプリケーションを制御するアプリケーション管理情報であって、前記過去に放送された番組コンテンツの前記サーバからの配信可否の特定が可能となる情報を含むアプリケーション管理情報が多重化されており、
 前記放送波が前記放送波受信手段に受信された場合、前記番組コンテンツと、前記アプリケーション管理情報とを分離する分離手段と、
 前記分離手段により分離された前記番組コンテンツを保持する保持手段と、
 をさらに備え、
 前記番組アクセス手段は、過去の番組コンテンツが再生対象である場合、前記分離手段により分離された前記アプリケーション管理情報により、当該過去の番組コンテンツの前記サーバからの配信が可能であることが特定されるとき、前記サーバをアクセス先として選択し、当該アプリケーション管理情報により、当該過去の番組コンテンツの前記サーバからの配信が不可能であることが特定されるとき、前記保持手段をさらにアクセス先として選択する、
 放送通信連携受信端末。

今日のみどころ

 放送と通信の連携に向けた技術開発が進められています。放送は、データ量の制限が比較的厳しい、片方向通信、1対多などの特徴があります。一方、通信は、データ量の制限が比較的緩い、片方向及び双方向の通信が可能、1対1及び1対多の通信が可能などの特徴があります。
 このように、通信と放送という2つのものの特徴がトレードオフの関係になっているときには、それぞれの利点を生かし、欠点を小さくする又は無くすように技術を組み合わせる方向で考えましょう。