再生開始待ち時間を減らし再生停止を回避するカラオケシステムの発明 第一興商

 通信カラオケのシステムで通信回線の混雑によって再生開始待ち時間が増大する問題、再生が途中で停止する問題を解決する発明です。

 この発明のカラオケ装置は、まず低画質データを受信し、低画質映像再生中に高画質データを受信します。これにより、再生開始待ち時間の増大の問題、映像の再生停止の問題を解消できます。

 特許第6051066号 株式会社第一興商
 出願日:2013年1月31日 登録日:2016年12月2日



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

通信回線の混雑によって再生開始待ち時間増大、再生停止の問題

 カラオケの歌唱中の映像をサーバに保存しておき、後でそれと同じ曲を歌唱するときに、サーバに保存しておいた映像を受信して再生する「コラボレーション歌唱」があります。

 通信回線が混在している場合、コラボレーション歌唱で通信によって映像を受信するのに時間を要するという問題があります。映像データの受信に時間を要すると、映像の再生開始までの待ち時間が長くなります。

 また、映像データを受信しながら映像を再生すると、通信回線の混雑によって映像の再生中に再生が停止する可能性があります。

 このようなことが起こると、歌唱者が興ざめしてしまいます。なお、この問題は、「コラボレーション歌唱」に限らず、通信によって映像データを受信して再生するカラオケシステム一般に生ずるものです。

まず低画質データを受信し、低画質映像再生中に高画質データを受信

 この発明では、サーバ装置が、データサイズが大きい高画質映像データと、それよりデータサイズが小さい低画質映像データとを記憶しています。

 カラオケ装置は、歌唱者から曲の選択を受けると、その曲の低画質映像データと歌唱データをサーバから受信し、受信完了後に再生開始します。低画質映像データはデータサイズが小さいので、完了までの時間が短く、比較的早く映像の再生を開始できます。

 そして、低画質映像データを再生しながら、高画質映像データの受信をし、受信完了後に高画質映像データの再生を開始します。カラオケ装置は、高画質映像データを用いて高画質な映像を再生することができます。このとき、高画質映像データの受信が完了しているので、再生中に停止することもなくなります。

 このようにすることで、映像を早く再生開始できるとともに、途中で停止することを防止できます。

 なお、低画質映像データを再生中に高画質映像データを受信するときに、映像データの終わりの方からデータを受信するというアイデアも含まれています。これは、本サイトで紹介した以下の特許にも含まれていたアイデアです。

【課題】
サーバーからダウンロードした歌唱動画データを再生し、コラボレーション歌唱を行わせるカラオケ用の歌唱動画再生システムにおいて、歌唱を速やかに開始させつつもサーバーによる回線の監視負担を軽減し、歌唱動画データの再生停止を抑制する。
【請求項1】
 サーバーとカラオケ装置とを通信回線によって接続した歌唱動画再生システムであって、
 前記サーバーは、
  或る歌唱映像が記録された第1歌唱映像データ、及び、前記或る歌唱映像が記録されると共に前記第1歌唱映像データよりも高画質でデータサイズの大きな第2歌唱映像データが記憶された歌唱映像データ記憶手段と、
  前記或る歌唱映像に対応する歌唱音声データが記憶された歌唱音声データ記憶手段と、
  前記カラオケ装置に対し、前記第1歌唱映像データ及び前記歌唱音声データを送信し、前記第1歌唱映像データの送信終了後に前記第2歌唱映像データを送信するデータ送信手段とを有し、
 前記カラオケ装置は、
  前記第1歌唱映像データ、前記第2歌唱映像データ、及び、前記歌唱音声データを受信するデータ受信手段と、
  前記第1歌唱映像データ及び前記歌唱音声データの受信完了を条件に、前記第1歌唱映像データ及び前記歌唱音声データの再生を開始するデータ再生手段とを有し、
 前記データ受信手段は、
  前記第1歌唱映像データ及び前記歌唱音声データの再生期間中に、前記第2歌唱映像データを受信することを特徴とする歌唱動画再生システム。

今日のみどころ

 カラオケシステムで映像再生開始までの待ち時間を減らすことと、映像を高画質化することを両立する発明です。技術自体はとてもシンプルで理解しやすいです。「カラオケ」限定が審査で有利に働いたのではと推測します。

 広い技術範囲をカバーする権利を取ろうとして限定をなるべく少なくすることが多いですが、技術がシンプルである場合は、割り切って対象を限定することでうまく権利化するのもよい戦略だと思います。

 また、上記の通り、低画質コンテンツの再生中に高画質コンテンツのデータを逆順で取得するアイデアは、最近発明した別の特許にも含まれていました。新しいアイデアを求めている方は、取り入れることができないか検討してみましょう。