従来のETCの料金収受システムでは、有料道路の料金が一定の金額であるので、一般道路の渋滞を解消することができないという問題がありました。
この発明では、有料道路と一般道路が並走している場合に、一般道路に渋滞が発生すると、有料道路の料金を割り引きます。これにより、有料道路に車両を誘導することで一般道路の渋滞を緩和します。
特許第5932693号 株式会社東芝
出願日:2013年3月21日 登録日:2016年5月13日
一般道路の渋滞を解消することができない
高速道路などの有料道路の料金を収受するETCが普及しています。ETCでは、車両が料金を支払うために料金所で停車することなく、無線通信によって料金収受処理を行います。走行しながらノンストップで料金の収受処理が完了するので、渋滞が発生しにくくなります。
有料道路と一般道路が並走している場合、一般道路が渋滞しているときでも、有料道路を通行するには一定の料金を支払わなければなりません。そのため、利用者は、有料道路を利用せずに一般道路を通行することが多いのが現実です。すると、一般道路の車両が減らず、一般道路の渋滞を緩和することができないという問題がありました。
有料道路に車両を誘導して、一般道路の渋滞を緩和する
この発明の料金収受システムでは、有料道路と一般道路とが並走している場合に、一般道路で渋滞が発生しているかどうかに関する情報(渋滞情報(*1))を取得します。
そして、車両が走行している有料道路に並走する一般道路に渋滞が生じている場合、車両が走行している有料道路の利用料金に割引料金を適用します。一般道路に渋滞が生じていないときには有料道路に通常料金を適用します。
このようにすることで、一般道路に渋滞が発生しているときに車両を有料道路に流すことで一般道路の車両を減らし、渋滞を緩和する効果があります。
なお、追加的な発明として、有料道路で割引料金が適用されることを車両に通知する発明や、有料道路から一般道路に出場した後に再び有料道路に入場した場合にも割引料金を適用する発明などが含まれています。
*1 渋滞情報は、例えば、VICS(vehicle information and communication system)により得られます。
有料道路利用者の走行経路に渋滞割引対象の区間が含まれる場合には、その区間分の利用料金を割引いて収受することができる料金収受システムを提供する。
【請求項1】
一般道路が並走している有料道路の料金所の入口及び出口において、当該料金所に進入してくる車両に搭載された車載器との間で無線通信を行なうことにより前記車載器のICカードの情報を読み取り当該車両の入口から出口までの走行経路に対する利用料金の収受処理を行なう料金収受システムにおいて、
前記料金所の出口において、上位装置から前記一般道路の渋滞区間の発生又は解消を示す渋滞情報を受取る渋滞情報受取手段と、
前記渋滞情報により当該車両の前記走行経路内に前記渋滞区間が含まれているか否かを判定する判定手段と、
前記渋滞区間が含まれていると判定された場合はその渋滞区間分の利用料金に基づく割引料金を適用して当該車両に対する利用料金を算出し、前記渋滞区間が含まれていない場合は割引料金を適用しないで通常料金を適用して当該車両に対する利用料金を算出する料金算出手段と、
を具備する料金収受システム。
今日のみどころ
有料道路の料金を割り引くことで有料道路に車両を誘導して、一般道路の渋滞を緩和することができる発明です。ETCのシステムによって料金を時間的に変化させることでこのような制御を実現することができます。
この発明は、最終的には、有料道路の料金を割り引くことをします。これは、お金のやりとりの約束事と捉えられると特許の保護対象から外れてしまう可能性があります。そこで、無線通信渋滞情報を取得するとか、料金の算出処理を行う、というように、情報処理として表現することで特許の保護対象に入れるように工夫してあるといえそうです。いわゆるビジネスモデル特許の書き方と言えます。このような点でも参考になります。