電波の干渉度を評価して干渉回避&チャネル利用効率向上させる特許発明(パナソニック)を紹介

 今回は、無線通信の効率についての特許を紹介します。

 通信端末が無線のチャネルを選択するときに、通信量を増加させずにチャネルの利用効率を高めたいという要求に応える発明です。

 この発明では、複数のチャネルから通信に用いるチャネルを選択する際に、電波に関する3つの指標を考慮して、干渉度が小さいチャネルを優先的に選択します。これにより、干渉を回避でき、チャネルの利用効率を向上させます。スマートメータの通信システムに利用可能です。

 特許第5895194号 パナソニックIPマネジメント株式会社
 出願日:2012年3月9日 登録日:2016年3月11日



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

通信量を増加させずにチャネルの利用効率を高めたい

 無線通信では、電波で送受信される通信信号の混信を回避するため、通信帯域を複数のチャネルに分けて通信に使用します。通信端末は、複数のチャネルから通信に用いるチャネルを選択して使用することがあります。

 チャネルを選択するときには、他のチャネルとの干渉を抑えながらチャネルの利用効率を高めることが求められます。

 複数のチャネルのうちから通信に用いるチャネルを選択する従来技術では、チャネルを選択したことを周囲に伝えるためのデータパケットの送信が必要であるなど、通信トラフィックが増加するという問題があります。また、通信システム全体でのチャネルの利用効率を高めることが難しいという問題があります。

受信信号強度、周波数差、チャネル利用効率の3指標で干渉度合いを評価

 この発明では、複数のチャネルのうちから通信に用いるチャネルを選択するときに、干渉度という指標を用います。干渉度は、チャネルの干渉の度合いを示すもので、干渉がの度合いが小さいほど小さい値をとります。

 ここで、干渉は、通信信号の受信信号強度が小さい、つまり近くで他の通信端末が通信信号を送信していないほど小さく算出されます。また、他の端末が使用しているチャネルとの周波数差が大きい、つまり使用する周波数帯域が離れているほど小さく算出されます。さらに、チャネルの利用効率が小さい、つまり通信量が少ないほど小さく算出されます。

 通信端末は、複数のチャネルから通信に用いるチャネルを選択する際に、(1)受信信号強度、(2)周波数差、(3)チャネルの利用効率の3つの指標を取得し、これらを重みづけして考慮して、干渉度が小さいチャネルを優先的に選択することがポイントです。これにより、干渉が小さいチャネルを選択することができ、干渉を回避できます。

 なお、実施の形態にはスマートメータに適用される例が示されています。

【課題】
複数のチャネルから通信チャネルを選択するに際し、通信に用いられているチャネルとの干渉を回避し、かつチャネルの利用率を高めることを可能にした通信端末、およびこの通信端末を用いた通信システムを提供することを目的とする。
【請求項1】
 複数のチャネルから選択されるチャネルを用いて無線通信を行う通信端末であって、
 通信のためのチャネルを選択するに際して、選択可能なチャネルごとに干渉が生じる程度を数値化された干渉度として求める干渉度算出部と、
 前記干渉度算出部が求めた前記干渉度を用いることにより干渉が生じにくいチャネルを通信用のチャネルとして優先的に選択するチャネル選択部とを備え、
 前記干渉度算出部は、
 着目するチャネルで通信していない場合の受信信号強度と、他の通信端末が使用しているチャネルと着目するチャネルとの周波数差と、着目するチャネルが他の通信端末に利用されている確率である利用率とに、重み係数を乗じて加算した値を前記干渉度として算出する
 ことを特徴とする通信端末。

今日のみどころ

 無線通信のチャネルを選択するときに、干渉が小さいチャネルを選択するのは普通のやり方です。この発明では、この干渉を具体的に、(1)受信信号強度、(2)周波数差、(3)チャネルの利用効率の3つの指標から評価している点がポイントと言えます。

 制御の方向性(制御の方針)は、従来と同じでも、より具体的な構成を開示して効果を主張することで特許性が認められることがあります。すばらしい。