位相を変えて2つのアンテナ信号を合成するダイバシティ通信機の発明 パナソニック

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 2つのアンテナ(ダイバシティアンテナ)を用いる無線通信での通信ロスの低減を目的とする無線通信機に関する発明です。

 一方のアンテナの受信信号の位相を変化させて他方のアンテナの受信信号と合成することで生成される信号にエラーがないと判定されると、この信号を復調します。その際、受信信号の位相の変化の周期を、データを送受信する時間長より長くすることがポイントです。ダイバシティ方式で通信する通信装置のうちあまり移動しないもの(家電等)に適用可能な技術です。

 特許第5799271号(WO2012/042748) パナソニックIPマネジメント株式会社
 出願日:2011年9月2日(優先日:2010年9月30日) 登録日:2015年9月4日



 ※特許の本の紹介。
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ダイバシティのすべてのアンテナの受信感度が不良だと良好な信号が得られない問題

 アンテナの送受信のエラーを少なくしたり信頼性を向上させるために2つ以上のアンテナを用いる技術(ダイバシティ)があります。ダイバシティでは、2つ以上のアンテナそれぞれが受信する信号のうちの良好な1つを選択して用いたり、2つ以上のアンテナそれぞれが受信する信号をすべて用いたりして良好な品質の信号を受信します。

 しかし、通信機器が固定設置される場合、アンテナの位置も固定され、2つ以上のアンテナのすべての受信感度が不良である場合、良好な品質の信号が得られないことがあるという問題があります。

2つのアンテナからの信号の位相を変えて合成し、エラーがない場合に復調

 そこで、この発明では、一方のアンテナから受信する信号の位相を変えて他方のアンテナから受信する信号と合成し、合成により得られる信号のエラーがない場合に、この信号を復調するようにします。

 一方のアンテナが受信する信号と他方のアンテナが受信する信号は、同じ信号で位相がずれていると想定されるので、上記のようにすると2つのアンテナで受信した信号の両方を用いて、1つのアンテナで受信する場合より良好な信号を得ることができます。

 さらに、位相を変える周期をデータを送受信する時間長より長くすることで、仮に1つのパケットを良好に受信できなかった場合でもその再送パケットを良好に受信できる確率を高めることができます。

 なお、このように位相を変える周期をデータを送受信する時間長より長くする技術は、実施の形態3に記載されています。

【課題】
 装置構成が大きくなることを防ぎ、局所的な受信電界レベルの落込みを回避できる無線通信機を実現する。
【請求項1】
 第1のアンテナと、
 第2のアンテナと、
 前記第1のアンテナにより受信または送信する高周波信号の位相を変化させる可変移相手段と、
 前記第1のアンテナにより受信または送信する高周波信号の位相を変化させる量である移相量を可変とするように前記可変移相手段を制御する移相制御手段と、を備える無線通信機であって、
 前記第1のアンテナおよび第2のアンテナを介して、同じ内容のパケットデータを順次、受信するようになっており、
 前記移相制御手段が、前記可変移相手段を制御して一定の周期で繰り返すように前記移相量を変化させており、その周期をT1とし、前記高周波信号に含めて送受信するデータの時間長をT3としたとき、
 前記移相制御手段は、T1>T3の関係を充たすように可変移相手段を制御して高周波信号の移相量を変化させる無線通信機。

今日のみどころ

 ダイバシティ技術にはさまざまな方法が検討されています。この発明では、どちらかというと、持ち運びできる通信端末(例えば携帯電話等)ではなく固定設置された通信端末(例えば家電)を想定したダイバシティ技術が検討されています。

 汎用的なものを考えているだけだと問題が不明確で発明が生まれにくいこともあります。用途を限定して具体的にすると、その用途に特化した課題解決ができ、新しい発明が生まれることがあります。すばらしい。