無線の送受信感度を向上し、配光特性の劣化を抑制する照明光源の発明 パナソニック

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 無線通信を行う照明用光源において、電波の到達距離が低下するなどの問題がありました。

 この発明では、発光素子の基板を環状にし、その貫通孔にアンテナなどを搭載した基板が挿入されています。これにより、通信信号を含む電波の送受信の感度を向上させるとともに、配光特性の劣化を抑えます。

 特許第5793662号(特開2012-227021) パナソニックIPマネジメント株式会社
 出願日:2011年4月20日 登録日:2015年8月21日



 ※特許の本の紹介。
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無線通信する照明装置の電波の到達距離が低下するなどの問題

 無線通信を利用して制御される照明用光源は、無線通信に用いるアンテナを装置内部に備えています。照明用光源が壁面や天井などに埋め込まれる場合には、壁面や天井などからの影響により、アンテナが送受信する電波の到達距離が低下するなどの問題が生じます。

 また、この問題を回避すべくアンテナを光の出射方向(前方)側に配置すると、光源が出射する光をアンテナなどが遮ることになり照明用光源としての機能を損ないます。

発光素子が搭載される基板の貫通孔にアンテナ搭載基板を挿入

 そこで、本発明では、光源装置内でのアンテナの配置を工夫することで電波の到達距離の低下を抑制します。

 発光素子が実装された環状の基板(貫通孔が設けられた基板)の孔に、無線通信アンテナが実装された基板が挿通されており、無線通信アンテナが基板より前方(光の出射方向に進んだ側)に配置されています。

 これにより、発光素子が出射する光をアンテナが遮ることがなくなります。またアンテナは、基板よりも前方に位置しているので、アンテナが送受信する電波が壁面などから影響を受けにくい構成になっています。

 2.4GHz帯、433MHz帯等での無線通信(IEEE802.15.4等)を用いて制御可能な照明装置に適用可能な発明です。

【課題】
無線信号を感度良く送受信できるとともに、配光特性への悪影響を可能な限り抑制した照明用光源を提供する。
【請求項1】
 外部からの無線信号を受けて点灯制御する照明用光源であって、
 1以上の発光素子からなる発光部が、実装基板の前面に各々の主出射方向を前方に向けた状態で平面配置され、
 グローブが前記実装基板の前方を覆い、
 前記無線信号を送受信するアンテナ部が、前記グローブ内における前記実装基板の前面から前方の領域であって、かつ、前記実装基板を平面視した場合の前記発光部が存在する領域から内側の領域に、前記グローブと接触しないように支持具により支持されており、
 前記アンテナ部は、当該アンテナ部への給電経路となる回路基板上に形成されており、
 前記アンテナ部は、前記回路基板を支持具として前記グローブ内に支持されており、
 前記回路基板には、前記アンテナ部で送受信した無線信号を基に、前記発光素子への給電を制御するための点灯制御信号を生成する無線制御部が設けられており、
 前記実装基板には貫通孔が設けられており、
 前記回路基板は長尺状であり、
 前記回路基板の長尺方向における一端から他端にかけての少なくとも一部が前記実装基板の貫通孔に挿通されていることにより、当該回路基板がランプ軸に平行に配置されている
 ことを特徴とする照明用光源。

今日のみどころ

 無線通信機能を搭載した照明用光源は、無線通信技術と照明技術という比較的新しい技術の組み合わせといえると思います。この発明は、このような装置において、無線通信機能と照明機能とを両立するうえでの問題を解決する発明といえます。技術の新しい組み合わせは、特許になりやすいと思います。単なる組み合わせと言われないような効果があれば進歩性が認められます。

 近年、白熱電球や蛍光灯からLED光源の照明への置き換えが進んでいます。LED光源の照明は、消費電力が少ないという特徴のほか、調光調色の制御がしやすいという特徴もあり、専用の制御装置やスマホなどから無線通信を経由して制御される使い方が想定されます。このような場合にLED光源の照明が良好な無線通信ができることが期待されます。