無線インターロック通信でリアルタイム性向上と通信量削減を両立する発明 村田機械

 パラレル通信と無線通信を用いたインターロック通信において、リアルタイム性の向上と、通信量の削減との両立が課題となっていました。この課題を解決する発明です。

 この発明の通信装置は、インターロック通信にエラーが発生しているか否かを判定し、エラーの発生の有無に応じて無線通信の周期を調整します。これにより、リアルタイム性の向上と、通信量の削減との両立を図ります。

 特許第6052132号 村田機械株式会社
 出願日:2013年10月22日 登録日:2016年12月9日



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

無線インターロック通信でリアルタイム性の向上と通信量の削減の両立が課題

 工場内などで物品を搬送する搬送車が利用されています。搬送車は、物品を受け渡す相手の装置との間で物品を安全かつ確実に受け渡し(荷受け、荷渡し)するため、受け渡しの際に制御信号のやりとり(インターロック通信)をします。

 従来、インターロック通信は、有線のパラレルインタフェースを介したパラレル通信により行われます(例えばSEMI E84規格)。また、インターロック通信の一部に光通信が用いられることがあります。光通信にかかるコストを低減させるため、無線LAN(例えばWi-Fi)の通信を用いることもあります。

 パラレルインタフェースの信号を無線通信でやりとりするには、パラレルインタフェースの各ビットの情報を周期的に読み取って、無線通信のパケットに含めることが行われます。

 しかし、パラレルインタフェースの信号をリアルタイムに相手に伝えるためには、短い時間間隔でパケットを送信する必要がありますが、通信量が多くなる問題があります。一方、通信量を節約すべく時間間隔を長くすれば、信号のリアルタイム性が犠牲になるという問題があります。

エラー発生有無に応じて無線通信の周期を調整

 この発明は、パラレルインタフェースと無線通信インタフェースをもち、これらのインタフェース間で通信信号を相互に変換する通信装置に関する発明です。

 この発明の通信装置は、これらのインタフェース間で通信信号を変換しながら、通信にエラーが発生しているか否かを判定します。

 エラーが発生しているときには、無線通信の周期を短くします。これにより、エラーが発生していることを速やかに遅滞なく伝達することができます。一方、エラーが発生していないときには、無線通信の周期を長くします。これにより、無線通信の通信量を削減することができます。

 このように、通信装置は、エラーの発生の有無に応じて無線通信の周期を調整することで、インターロック通信のリアルタイム性の向上と、通信量の削減とを両立することができます。

【課題】
被搬送物を載置する載置ポートと、被搬送物の搬送及び移載を行う搬送台車との間の通信を行う通信デバイスにおいて、通信データ量の増加を抑制しつつ、遅滞なくエラー情報を伝達することを目的とする。
【請求項1】
 被搬送物が載置される載置ポートとの間で通信するパラレルインタフェースと、
 前記載置ポートとの間で前記被搬送物を移載する搬送台車とネットワークを介して通信するネットワーク通信部と、
 前記パラレルインタフェース及び前記ネットワーク通信部を制御する制御部と、を備え、
 前記制御部は、前記載置ポートと前記搬送台車との間で前記被搬送物を移載するためのインターロックシーケンスにおいて、前記載置ポート及び前記搬送台車との通信処理を、繰り返し、
 前記通信処理は、
  前記ネットワーク通信部で受信された第1のパケットを第1のパラレル信号に変換する処理と、
  前記第1のパラレル信号を前記パラレルインタフェースから出力する処理と、
  前記パラレルインタフェースから入力された第2のパラレル信号を第2のパケットに変換する処理と、
  所定の待機期間をおいて、前記第2のパケットを前記ネットワーク通信部から前記搬送台車に送信する処理と、
  前記第1のパケット又は前記第2のパラレル信号に基づき、前記インターロックシーケンスにおけるエラーが生じているかを判定する処理と、
  前記インターロックシーケンスにおけるエラーが生じていない場合には、前記所定の待機期間を第1の時間間隔に設定し、前記インターロックシーケンスにおけるエラーが生じている場合には、前記所定の待機期間を前記第1の時間間隔より短い第2の時間間隔に設定する処理と、
 を含む
 通信デバイス。

今日のみどころ

 搬送車の無線通信によるインターロック通信に関する発明です。この発明のキモは、エラー発生時に通信間隔を短くする点ですが、これ自体がそれほど新しいとは考えられませんでした。無線通信を用いたインターロック通信に関する技術が少ないのも特許をとれた要因かもしれません。

 このように、比較的ありふれたアイデアを新規な技術分野に適用するだけで特許が得られたりもします。キモのアイデアはありふれたものであっても、従来の製品にはない技術であれば、出願してみる価値がありますよ。すばらしい。