周波数分割複信方式(送受信それぞれで別の周波数帯域を用いて全二重通信を行う方式)では、送信及び受信のそれぞれについてインピーダンス整合をとる必要性があります。
この発明では、送信及び受信それぞれの通信ロス率を最小化するように可変容量回路の容量を制御します。これにより電波を送受信する際の電力損失を抑制する効果があります。MIMOに利用可能な技術です。
特許第5793096号(特開2013-183377) KDDI株式会社
出願日:2012年3月2日 登録日:2015年8月14日
送信及び受信のそれぞれについてインピーダンス整合をとる必要性
携帯電話などの通信端末では、アンテナのインピーダンスが変化しやすく、このインピーダンスの変化によりアンテナによる電波の送受信特性が劣化します。また、周波数分割複信方式では、送受信で別々の周波数帯域を用いるので、送信及び受信のそれぞれについてインピーダンス整合をとる必要があります。
従来のインピーダンス制御方法では、MIMOに適用できるものがなく、方向性結合器の挿入により電力損失が生じたり、回路規模が増大したりする欠点がありました。
送信及び受信それぞれの通信ロス率を最小化するように可変容量回路の容量を制御
本発明では、アンテナごとに可変容量回路が設けられており、当該アンテナを使用した送信及び受信それぞれの通信ロス率に基づいて、この通信ロス率を最小化するように可変容量回路の容量を制御します。
この制御は、送信品質及び受信品質それぞれの変動量が閾値を超えた場合に行われます。このようにすることで、送信及び受信それぞれに用いるアンテナのインピーダンスを制御します。具体的には、電波の送信品質に基づいて送受信用アンテナのインピーダンスを制御するとともに、受信品質に基づいて受信用アンテナのインピーダンスを制御します。
これにより、送受信で状況が異なる場合でもアンテナのインピーダンスを適応的に設定することができ、電波を送受信する際の電力損失を抑制する効果があります。MIMOに利用可能な技術です。
(用語)
周波数分割複信方式(FDD:Frequency Division Duplex):送受信それぞれで別の周波数帯域を用いて全二重通信を行う方式
MIMO(Multiple Input Multiple Output ):複数のアンテナを組み合わせてデータ送受信の帯域を広げる無線通信技術
送受信で状況が異なる場合でもアンテナのインピーダンスを適応的に設定し、余計な電力損失が生じない無線通信端末、インピーダンス制御方法およびインピーダンス制御プログラムを提供する。
【請求項1】
複数のアンテナを有し、周波数分割複信方式で無線通信可能な無線通信端末であって、
自機の送受信品質情報を取得する送受信品質情報取得部と、
前記取得された送受信品質情報のうちの送信品質情報に基づいて、第1のアンテナ群のインピーダンスを制御するとともに、前記取得された送受信品質情報のうちの受信品質情報に基づいて、前記第1のアンテナ群に属さないアンテナで構成される第2のアンテナ群のインピーダンスを制御するインピーダンス制御部と、を備えることを特徴とする無線通信端末。
今日のみどころ
1つの周波数帯域で送信及び受信をする通信端末でのインピーダンス整合を行う技術は従来あったようですが、これを周波数分割複信方式での送信及び受信それぞれに利用するようにしたものと考えられます。また、単に従来技術を送信及び受信それぞれに適用するだけでは、従来技術の単なる組み合わせであるとして進歩性が認められない可能性があります。
本発明では、図2のフロー図に示されるように、一連の処理により送信及び受信それぞれのインピーダンス制御を行うことができるようにしていることで、単なる組み合わせではない、つまり進歩性を有することを主張できると思います。
特に進歩性の判断で微妙な場合には、効果をうまく説明できるかどうかが特許性の認定の分かれ目になってきます。上手に効果を説明できるようになって特許とりましょう。