スリープ中の無線ルータのWANインタフェースを選択起動する発明 KDDI

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 この無線ルータは、複数のWAN側インタフェースと、LAN側インタフェースを有しています。複数のWAN側インタフェースをスリープさせている状態でLAN側インタフェースからウェイクアップ信号を受信すると、受信にしたウェイクアップ信号を解析して、どのWAN側インタフェースを起動させるかを決定します。「ウェイクアップ信号」というのは、この無線ルータをウェイクアップさせるための特別な信号で、起動させるWAN側インタフェースを示す情報を含む情報です。
 これにより、通信に必要なWAN側インタフェースだけを起動させる、つまり、通信に不要なWAN側インタフェースを起動させることを抑制することで、消費電力を低減することができます。いわゆるモバイルルータに適用可能な技術です。

 特許第5858814号(特開2013-162476) KDDI株式会社
 出願日:2012年2月8日 登録日:2015年12月25日



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

すべてのWAN側インタフェースを起動することで電力消費が大きい問題

 インターネットへ接続するアクセスネットワークを複数有する無線ルータがあります。アクセスネットワークは、例えば、携帯電話網の3G、LTE、WiMAX、無線LANなどがあります。無線ルータが実際に通信するときには、これらの複数のアクセスネットワークのいずれかを利用して通信を行うことになります。
 従来の無線ルータのスリープ制御では、スリープ状態から、複数のアクセスネットワークのすべてに電源供給する状態になり、その後に、適切なアクセスネットワークだけを選択するという手順を踏んでいたので、消費電力が大きいという問題があります。

起動させるWAN側インタフェースを選択する情報を含むウェイクアップ信号

 この発明の無線ルータは、無線端末からのウェイクアップ信号をLAN側インタフェースで受信します。そして、受信したウェイクアップ信号に含まれるWAN選択情報に基づいて、起動させるアクセスネットワークを選択して起動させます。無線端末は、自装置の位置情報を予め取得し、この位置情報に基づいて無線ルータがどのアクセスネットワークを使用するのが適しているかを判断した上で、無線ルータが使用すべきアクセスネットワークを示すWAN選択情報を含めたウェイクアップ信号を無線ルータに送信します。
 WAN選択情報は、例えば、所定のフレーム長からなる信号です。この場合、フレーム長とWAN側インタフェースとの対応付けが予め用意されていることが必要です。このようにすると、フレームの中身の解析処理まで行うことなく、フレーム長を得るだけの簡単な信号処理でWAN選択情報を取得できる利点があります。比較的簡単な処理であるので電池駆動可能であることも利点です。

【課題】
ウェイクアップ時の消費電力を抑制し、通信確立のための所要時間を短縮可能な無線ルータ、WAN通信起動方法及びプログラムを提供する。
【請求項1】
 複数のアクセスネットワークにそれぞれ接続される複数のWAN(Wide Area Network)側インタフェースと、無線端末が接続されるローカルネットワークに接続されるLAN(Local Area Network)側インタフェースとを有し、スリープ状態の設定が可能な無線ルータであって、
 前記複数のアクセスネットワークのうちの1つを指示するWAN選択情報を含むウェイクアップ信号を、前記LAN側インタフェースの機能を用いることなく受信可能なウェイクアップ信号受信部と、
 前記ウェイクアップ信号受信部によって受信された信号がウェイクアップ信号であるか否かを判定するウェイクアップ判定部と、
 ウェイクアップ判定部が真の判定を行った際、受信されたウェイクアップ信号から当該WAN選択情報を抽出し、当該WAN選択情報の指示に応じて、停止状態にある前記複数のWAN側インタフェースのうちの1つを起動させるWAN起動手段と
を有することを特徴とする無線ルータ。

今日のみどころ

 無線通信のための符号化等のための処理が高度化&複雑化すると、高速通信が可能になり、この点が技術の進歩として取り上げられることが多いです。高速通信に要する電力は高くなる傾向があります。その一方で、低速で低消費電力な通信が求められることもあります。本発明のように、比較的短いデータを送るために用いられる通信がコレに該当します。
 この発明では、LAN側インタフェースの中に低速かつ低消費電力で動作する電池駆動の処理ブロック(ウェイクアップ信号受信部、判定部)を設けて、そこでウェイクアップ信号を処理します。これにより無線ルータの本体部分をスリープ状態にして低消費電力化を図ります。また、ウェイクアップ信号も、フレーム長に意味を持たせることで処理量の低減に寄与しています。
 このように、装置の本体部分をスリープさせ、その本体部分をウェイクアップさせる低消費電力なブロックを設けるというアイデアは他の技術にも応用できそうですね。