移動局ごとの条件に基づくLTEの無線品質測定により省電力化する特許発明 NTTドコモ

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 LTE (Long Term Evolution)における品質測定に関する発明です。LTEでは、移動局(携帯端末、つまりスマホや携帯電話)が無線品質についての測定処理を行い、その測定結果を無線基地局に報告します。しかし、LTEのセル端以外での品質測定結果が得られない問題がありました。この問題を解決する発明です。

 この発明では、この無線品質の測定を、移動局ごとに条件に基づいて行うようにします。これにより、省電力化と十分な量のログの取得とを実現します。

 特許第5788063号(特開2014-171269) 株式会社NTTドコモ
 出願日:2014年6月26日 登録日:2015年8月7日



 ※特許の本の紹介。
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LTEのセル端以外での品質測定結果が得られない問題

 従来、LTEのMDT (Minimization of Drive Tests)では、移動局(スマホや携帯電話)は、自装置が属しているセルの受信レベル(又は受信品質)が、基地局から報知されるパラメータに含まれる受信レベル(又は受信品質)の閾値以下になると品質測定をすることになっています。

 しかし、このパラメータはセル内の全移動局が一律に受信するものであり、省電力のためセル端でのみ品質測定が行われるようなパラメータになっていました。これだと、セル端以外の場所での品質測定結果が得られないなどの問題があります。

基地局が送信するパラメータに従って品質測定する

 この発明では、基地局装置が移動局に対して個別にパラメータを送信するようにします。このパラメータを受信した移動局は、受信したパラメータに従って品質測定を行う(又は行わない)ようにします。

 これにより、全移動局一律の閾値ではなく、移動局のスペックや状態に合わせて移動局に品質測定を行わせる(又は行わせない)ことができます。従来技術との比較でいうと、従来セル端でのみ行われていた品質測定が、セル端以外でも行われるようになる効果があります。

(用語)
LTE : Long Term Evolution。携帯電話の通信規格。
MDT : Minimization of Drive Tests。ネットワークで移動局UEからの無線品質の測定結果を収集すること。

【課題】
Logged MDTモードにおいて、移動局UEのバッテリ制約を考慮した上で、十分な測定結果のログを得ることができる移動通信方法及び無線基地局を提供することを目的とする。
【請求項1】
 無線基地局が、配下のセルにおいて接続状態にある移動局に対して、所定パラメータを含むLogged Measurement Configuration メッセージを送信する工程Aと、
 前記移動局が、アイドル状態にある場合に、前記セルにおける無線品質及び前記所定パラメータを用いて、周辺セル測定を行うべきか否かについて判定する工程Bとを有し、
 前記無線基地局が、前記移動局の能力情報及び加入者プロファイル情報の少なくとも一方に基づいて決定された前記所定パラメータの値を前記移動局に対して通知することを特徴とする移動通信方法。

今日のみどころ

 基地局から見て、従来は全移動局一律の閾値を報知により送信していたのに対し、この発明では、移動局個別の閾値(パラメータ)を移動局に送信し、その閾値に基づいた品質測定を行わせます。

 従来技術とこの発明とでは、閾値を送信する宛先が異なるという違いがあります。これにより、個別の閾値を移動局それぞれに送信できる点をいかして移動局それぞれのスペックにあわせた柔軟な品質測定をさせることができます。

 標準化された技術で生じる問題を解決するために拡張するというアプローチです。従来は固定値だったものを変動値にするとか、従来は変動値だったものを固定値にするとか、効果とともに説明すると特許性が認められやすいです。