端末側と網側の両方のデータからネットワーク通信品質を測定する発明 ソフトバンク

 従来の品質測定における、常時のログの記録により負荷が上昇するという問題を解決する発明です。

 この発明の通信品質の測定方法では、端末側と網側(ネットワーク側)との両方のデータを突き合わせて通信品質を算出します。これにより、負荷の上昇を抑えることができるという効果が得られます。また、通信品質の測定条件を柔軟に変更できるという効果も得られます。

 特許第6029681号 ソフトバンク株式会社
 出願日:2014年4月2日 登録日:2016年10月28日



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

従来の品質測定では、常時のログの記録により負荷上昇の問題

 スマホや携帯電話のネットワーク(移動体通信網)において通信品質を測定する技術が用いられています。

 例えば、従来、測定者が携帯電話を操作することで通信の発信と着信とを行い、携帯電話に残るログ情報から通信品質の指標を得る方法があります。また、測定者の代わりにコンピュータがプログラムに従って通信品質測定を行う方法もあります。

 このような方法だと、携帯電話で常時ログ情報を記録しておかなければならないので、処理負荷が上昇するという問題があります。また、測定条件(測定時刻、測定場所)を測定者に伝えておかなければならず、柔軟な品質測定ができないという問題があります。

端末側と網側との両方のデータを突き合わせて通信品質を算出

 この発明では、端末側測定データと網側測定データとを取得し、これらの両方のデータに基づいて移動体通信網を介した通信の接続率などの通信品質の指標値を算出します。

 端末側測定データは、通信端末で記録された接続成否の情報、測定スケジュール識別情報、状態ログ情報、基地局品質情報などです。網側測定データは、網側で記録された接続成否の情報、測定スケジュール識別情報などです。

 ここで、測定スケジュールに関する情報が両方のデータに入っていることがポイントの1つです。これにより、取得した端末側測定データ及び網側測定データそれぞれが、異なる測定条件で行われた通信のデータを含む場合であっても、測定スケジュール識別情報を用いて突き合わせて参照することができ、通信品質の指標値を精度よく算出することができます。

【課題】
様々な通信品質測定を柔軟に行う。
【請求項1】
 通信品質測定の方法であって、
 移動通信網を介して通信可能な通信端末装置に、通信品質を測定する測定時刻を指定する測定スケジュールの情報とその測定スケジュールを識別する識別情報とを含む測定条件の情報を配信することと、
 前記測定条件の測定スケジュールで指定された測定時刻が到来したタイミングに、前記移動通信網を介して前記通信端末装置との通信を行うことと、
 前記測定スケジュールで指定された測定時刻が到来したタイミングに行われた複数回の通信について前記通信端末装置側で記録された接続成否の情報とその通信に対応する測定スケジュール識別情報と端末状態ログ情報と前記通信端末装置側で取得された端末在圏基地局品質情報とを含む端末側測定データと、前記測定スケジュールで指定された測定時刻が到来したタイミングに行われた通信について網側で記録された接続成否の情報とその通信に対応する測定スケジュール識別情報とを含む網側測定データとを取得することと、
 前記端末側測定データ及び前記網側測定データに基づいて、前記測定スケジュールで指定された測定時刻が到来したタイミングに行われた前記移動通信網を介した通信における接続率を含む通信品質の指標値を算出することとを含む方法。

今日のみどころ

 携帯電話のネットワークの通信品質測定において、端末側と網側とでそれぞれデータを取得し突き合わせて通信品質を測定する発明です。

 スマホや携帯電話を利用していると、きれいなに音声通話できたり、検索結果のデータがすぐに得られたりするのが当然のように思えてきます。しかし、その裏では、通信品質の測定と改善の取り組みがなされています。この通信品質の改善のための技術です。

 一般ユーザに直接見えにくい部分でもしっかり技術が進歩しています。すばらしい。