体温の変化と普段の傾向との両方を得られる貼り付け式体温計の発明 オムロンヘルスケア

 従来の貼り付け式体温計では、人の普段の体温の傾向がわからないという問題があります。この問題を解消する発明です。

 この発明の貼り付け式体温計は、設定期間ごとの体温を受信機に送信するとともに、さらに、体温が急変したときの体温を受信機に送信します。これにより、体温の大きな変化があったことを知るとともに、人の普段の体温の傾向を知ることができます。

 特許第6036133号 オムロンヘルスケア株式会社
 出願日:2012年10月4日 登録日:2016年11月11日



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

従来の貼り付け式体温計では普段の体温の傾向がわからない

 人の身体に張り付ける貼り付け式体温計があります。貼り付け式体温計は、測定した体温を無線通信によって受信機に送信します。

 貼り付け式体温計は、常に人の身体に張り付いているので、人の体温を常時計測することができます。この点が脇下に挟むタイプの体温計などと比較した場合の利点です。

 貼り付け式体温計の先行技術では、体温が0.1℃~5℃上昇すると受信機に信号を送信するものがあります。これだと、体温の上昇があったときの体温がわかりますが、それ以外の普段の体温の傾向がわからないという問題があります。

期間ごとの体温と、体温が急変したときの体温とを送信する

 この発明の貼り付け式体温計は、定期的に(予め設定された長さをもつ期間ごとに)その期間内で計測された温度を表す信号を受信機に送信します(第1の制御)。

 さらに、人の体温が急変した場合など、測定した体温の温度差が基準温度差に達した時点で、測定した温度を表す信号を受信機に送信します(第2の制御)。

 これにより、受信機側で、体温の大きな変化があったことを知ることができるとともに、普段の体温の変化の傾向を知ることができるという効果が得られます。

 なお、無線通信の方式は特に限定はありませんが、通信距離10m~20m程度の近距離通信との記載が明細書内にあることから、無線LAN、RFID、Bluetoothなどが想定されていると考えられます。

【課題】
被測定者の身体の或る被測定部位に貼り付けられる貼り付け式体温計であって、受信機側で、被測定者の体温に或る基準温度差を超える温度変化があったことを知ることができるとともに、体温変化の傾向を知ることができるものを提供する。
【請求項1】
 被測定者の身体の或る被測定部位に貼り付けられる温度センサと、
 上記温度センサの、上記被測定部位とは反対の側を覆って、上記温度センサを上記被測定者の周りの環境から遮断する断熱材と、
 上記温度センサの出力に基づいて、上記被測定部位の温度を表す信号を取得する測定部と、
 上記測定部が取得した信号を無線で送信するための通信部と、
 予め設定された長さをもつ設定期間毎に、上記通信部にその設定期間を代表する温度を表す第1の信号を出力させる第1の制御を行うとともに、上記設定期間内で、第1の時刻における第1の温度と第2の時刻における第2の温度との間の温度差が、予め定められた或る基準温度差に達したとき、その基準温度差に達した時点で、上記通信部に上記第2の温度を表す第2の信号を出力させる第2の制御を行う制御部と、
を備え、
 上記制御部は、上記第1の制御における或る設定期間内に、上記第2の制御によって上記通信部に上記第2の信号を出力させた時点で、上記第1の制御における上記設定期間に続く次の設定期間を開始することを特徴とする貼り付け式体温計。

今日のみどころ

 病院や介護の現場で使用される貼り付け式体温計の発明です。スタッフが手軽に患者や被介護者の体温の変化や普段の傾向を知ることに役立ちます。
 
 体温を測るということはずいぶん昔から行われていることですが、いろいろなセンサや通信インタフェースを備えたデバイスが登場したことで、体温データを得る方法や、得られる体温データの精度や量がずいぶん昔と変わっています。

 このように、昔から行っていることでも、新しいデバイスが登場したことで便利さがぐっと向上することがあります。昔から行っていることにも発明のタネは含まれていますよ。