正確な計数と推定とを使い分けてスマホ等の通信量を計測する発明 NTT

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 ユーザごとの通信量を計測するためのパケットカウント装置に関する発明です。スマホや携帯電話の料金の計算に使われるパケット数をカウントする装置です。
 この発明のパケットカウント装置は、全パケットカウントとサンプルパケットカウントとを併用します。全パケットカウントの対象ユーザ(従量課金のユーザ)に対しては正確なパケット数の計数を行う一方、サンプルパケットカウントの対象ユーザ(基本料金内のユーザ)に対しては少ないリソースでパケット数の推定を行うことができます。そして、パケット数の変化に応じて上記のパケット数の計数及び推定の適切な方を行うように動的に動作を変更することができます。これにより正確なパケット数の計数と、リソースの削減との両立を図ります。

 特許第5841553号(特開2013-25536) 日本電信電話株式会社
 出願日:2013年2月13日 登録日:2015年11月20日



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

パケットの全数の計数と、パケットの推定との利点と欠点

 スマホや携帯電話の料金は、ある閾値までのパケット数であれば基本料金の範囲内とし、それを超えると従量課金になる料金体系が一般的になっています。パケット数を計測する方法には、実際に流れたパケット全部の個数をカウントする方法と、実際に流れたパケットの一部を取得して統計的手法を用いてパケット数を推定する方法(sFlow)があります。
 実際に流れたパケット全部の個数をカウントする方法(全パケットカウント)は、正確である利点がある一方、トラフィック量が膨大になると処理に要するリソースを大量に消費する欠点があります。また、パケットのサンプルからパケット数を推定する方法(サンプルパケットカウント)は、リソースの消費が削減される利点がある一方、パケット数の正確さに欠ける欠点があります。

従量課金のユーザには正確なパケット計数、基本料金内のユーザにはパケット数の推定

 この発明のパケットカウント装置は、全パケットカウントとサンプルパケットカウントとを併用します。サンプルパケットカウントの対象のユーザのリストに含まれる、パケット数が所定の閾値を超えたユーザを、全パケットカウントの対象にします。また、全パケットカウントの対象のユーザのリストに含まれる、過去一定期間のパケット数が少ないユーザをサンプルパケットカウントの対象にします。
 これにより、従量課金のユーザに対しては課金のための正確なパケット数の計数を行うことができます。また、基本料金の枠内で納まるユーザに対しては、少ないリソースでパケット数の推定を行うことができます。そして、パケット数の変化に応じて適切なパケットカウントを行うように動的に動作を変更することができます。これにより正確なパケット数の計数と、リソースの削減との両立を図ります。

【課題】
2段階定額サービス契約者の大多数を占める、基本料金内ユーザに対するパケットカウントに使用するリソースを削減し、低コスト化を実現すると共に、閾値を超過したユーザは全パケットカウント対象とすることで、従量課金ユーザから使用量通りの確実な課金を実現することが可能なパケットカウント装置及び方法を提供する。
【請求項1】
 IPネットワークにおけるあるサービス条件を前提とした場合の課金を行うためのパケットのトラフィック量をカウントするパケットカウント装置であって、
 予め、基本料金で使用可能なトラフィック量以内となるユーザと従量課金となるユーザを判別するための閾値を格納した閾値記憶手段と、
 課金対象ユーザ識別情報とトラフィック量を格納する全パケットカウント対象ユーザリストを格納する第1の記憶手段と、
 サンプリングされたユーザの識別情報とトラフィック量を格納するサンプルパケットカウント対象ユーザリストを格納する第2の記憶手段と、
 パケットを受信するパケット受信手段と、
 前記パケットの情報に基づいて前記第1の記憶手段を参照し、該パケットのユーザが課金対象ユーザである場合には、該パケットのトラフィック量を前記第1の記憶手段の該当するユーザに積算する全パケットカウント処理手段と、
 前記全パケットカウント処理手段において、前記パケットのユーザが課金対象ユーザでない場合に、当該パケットをサンプリングするサンプリング手段と、
 前記サンプリング手段によりサンプリングされたパケットに対応するユーザの情報が前記第2の記憶手段にある場合には、該パケットのトラフィック量を該第2の記憶手段の該当するユーザに積算するサンプルパケットカウント処理手段と、
 前記第2の記憶手段を参照し、前記閾値記憶手段の前記閾値を超過しているユーザを抽出する閾値超過判定手段と、
 前記閾値超過判定手段において超過しているユーザを前記第1の記憶手段に追加するユーザ追加処理手段と、
 定期的に前記第1の記憶手段を参照し、該第1の記憶手段のレコード数が所定の上限値を超えているかを判定するユーザ数上限超過判定手段と、
 前記ユーザ数上限超過判定手段において前記上限値を超えているユーザ数を取得し、該ユーザ数分のレコードを前記第1の記憶手段から削除するユーザ削除手段と、
を有することを特徴とするパケットカウント装置。

今日のみどころ

 多くのリソースを使って精度が高い処理を行うことと、少ないリソースを使ってほどほどの精度の処理を行うことの両立を行うことはさまざまな技術分野で求められることだと思います。
 このような場合には、どのような場合にどちらの処理を行うとメリットが生かせるかを検討し、また、どちらの場合であるかを判断する方法を検討して、これらを組み合わせることで、それぞれのメリットを生かすことができると思います。複数のパラメータを用いた処理又は制御を考えるときには、よく使われるパターンだと思います。
 あと、最近の料金体系に従う課金を実現するためにこのような技術が検討されているということがわかり勉強になりました。