車載ネットワークでECUのソフトウェア更新を安定化する発明 トヨタ

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 車載ネットワーク(CAN)における電子制御装置(ECU)のソフトウェアの書き換え時の通信に関する発明です。車両の複数の電源状態(OFF, ACC, IG_ONなど)それぞれに対して、LAN同士を接続する中継装置が通信をする否かが予め定められています。ソフトウェアの書き換え対象のECUにソフトウェアを送信するときには、そのときの車両の電源状態で通信できる経路を判断して、その経路でソフトウェアを送信します。
 これにより、通信が安定した経路でソフトウェアを送信することができるので、ソフトウェアの更新の失敗を減らすことができます。

 特許第5884716号(特開2014-113952) トヨタ自動車株式会社
 出願日:2012年12月11日 登録日:2016年2月19日



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ECUのソフトウェアの更新のときにゲートウェイが通信断する問題

 車載ネットワーク(CAN)は、家やオフィスなどでよく使われるEthernetのLANなどと同じように、複数のLANが多段に接続された構成をとることができます。LAN同士の接続点には、両方のLANに接続されて、一方のLANから受信したパケットを他方に転送する装置であるゲートウェイECUが配置されます。
 一方、ECUは、車両の複数の電源状態(OFF, ACC, IG_ONなど)それぞれにおいて通信するかしないかが予め定められています。例えば、ゲートウェイECU1は電源状態ACCでは通信しない、というように定められています。
 ECUのソフトウェアの更新の際には、書き換えECUから書き換え対象のECUにソフトウェアが送信されます。ソフトウェアの送信中に車両の電源状態が変更されるときに、ゲートウェイECUが通信する状態から通信しない状態になると、ソフトウェアの送信が失敗し、ソフトウェアの更新が失敗するという問題があります。

車両の電源状態に応じてソフトウェアを送信する経路(ゲートウェイECU)を決定

 この発明の車載システムでは、各ECUが、自装置が通信可能な電源状態をLANを通じて書き換えECUに通知します。これにより、書き換えECUが、全てのECUの通信可能な電源状態を取得します。
 そして、書き換えECUは、ECUのソフトウェアの更新をするときには、現在の電源状態でソフトウェアの更新の対象のECUまで到達できる通信経路を決定して、その通信経路によってソフトウェアを送信します。また、この通信経路上にあるゲートウェイECUは、書き換えが終わるまで通信する状態を維持するように制御されます。このようにすることで、ソフトウェアを送信している最中に車両の電源状態が変わってもソフトウェアの更新が失敗することが防止されます。

【課題】
更新元の機器が複数のネットワークを介して更新機器のソフトウェアを書き換える場合に、安定して書き換えが可能な通信経路を確保する車載システムを提供する。
【請求項1】
 1つ以上の電子制御装置が接続されたネットワークが中継装置を介して階層的に接続された車載システムにおいて、
 ソフトウェアを外部から取得する第1の電子制御装置と、
 前記第1の電子制御装置と異なるネットワークに接続され、ソフトウェアを記憶する第2の電子制御装置と、を有し、
 前記中継装置は、予め定められた側のネットワークに接続された他の中継装置の情報であって前記中継装置が通信可能な車両の電源状態情報を含む通信経路決定情報を記憶した通信経路決定情報記憶手段と、
 予め定められた前記側のネットワークに流れるデータを監視して該ネットワークに接続された前記他の中継装置を含む電子制御装置の電子制御装置リストを作成する識別情報作成手段と、
 前記第1の電子制御装置の側のネットワークに、当該中継装置が記憶する前記通信経路決定情報と当該中継装置が作成し当該中継装置に対応づけられた前記電子制御装置リストを送信し、及び、予め定められた前記側のネットワークに接続された前記他の中継装置から受信した前記通信経路決定情報と前記電子制御装置リストを前記第1の電子制御装置の側のネットワークに転送する情報送信手段と、を有し、
 前記第1の電子制御装置は、前記中継装置から、前記通信経路決定情報と前記中継装置に対応づけられた前記電子制御装置リストを受信する情報受信手段と、
 前記中継装置に対応づけられた前記電子制御装置リストに基づきネットワーク構造を再現する構造再現手段と、
 前記通信経路決定情報及び前記ネットワーク構造に基づき、現在の車両の電源状態で通信可能な前記ネットワーク構造における前記中継装置を特定し、特定した1つ以上の前記中継装置を経由して当該第1の電子制御装置から前記第2の電子制御装置までソフトウェアを送信可能な通信経路を決定する通信経路決定手段と、を有することを特徴とする車載システム。

今日のみどころ

 ネットワークでの通信経路の決定方法に関する技術は、すでにさまざまな分野で研究がなされています。この発明では、ネットワークの種別を車載ネットワークに限定し、通信の用途をECUのソフトウェアに限定し、しかも、車両の電源状態を使った処理をするという限定をしています。
 このような限定は、権利範囲を狭めることにはなりますが、権利を取得したい技術的範囲がもともと限定されているのであれば十分と考えることもできます。欲張らないで、適切な権利範囲を狙って権利を取得するというのも良い特許戦略だと思います。

  



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