車載通信システムにおいてECUのような通信ノード(以降「ノード」)間の情報通信を中継する中継装置に関する発明です。この車載通信システムでは、各ノードが、他のノードとの通信が途絶しているか否かを示す情報(途絶情報)を生成して記憶しています。
中継装置は、各ノードから途絶情報を収集することで、どのノードとどのノードとの通信が途絶しているかを把握し、途絶している通信ができるように自動的に経路情報(ルーティング情報)を更新して、データフレームの中継をします。
これにより複雑な手動設定作業を行うことなくノード間の適切な情報通信がなされます。
特許第5900286号(特開2014-90249) 株式会社デンソー
出願日:2012年10月29日 登録日:2016年3月18日
ネットワーク構成が変わるとルーティング情報を更新する必要がある
車載通信システムでは、複数の通信ノードであるECUがバスに接続された形態のネットワークを有しています。複数のバスを接続し、また、複数のバスを外部と接続するために、バス間でデータフレームを中継する中継装置が用いられます。
中継装置は、バス間でのデータフレームの転送のためにルーティング情報を有しており、ルーティング情報を参照してデータフレームを適切に転送します。ネットワーク構成が変わると、それにあわせてルーティング情報を更新する必要があり、複雑な作業が必要となるという不便さがありました。
ノード同士の通信の途絶がないようにルーティング情報を自動更新
そこで、この発明の車載通信システムでは、各ノードは、他のノードとの通信が途絶しているか否かを示す途絶情報を生成します。
そして中継装置が各通信ノードから途絶情報を収集します。途絶情報を収集すると、どのノードとどのノードとが通信不可能であるかがわかります。中継ノードは、通信不可能なノード同士の通信が実現するようにルーティング情報を更新します。
これにより、自動的にルーティング情報を更新して各ノード同士のデータフレームのやりとりが適切にできるようになります。
中継装置において、複雑な設定作業を実施することなく、ルーティング情報を生成することを目的とする。
【請求項1】
伝送路によって構成された複数のサブネットワーク(10)を備えた通信ネットワーク(5)と、
前記サブネットワークのそれぞれに少なくとも一つが接続され、それぞれが、予め定められた機能を実現するノード(20)であり、定められた情報である規定出力情報を、規定されたタイミングごとに前記通信ネットワークに出力すると共に、当該ノードごとに設定され、他のノードから出力された情報である規定取得情報を取得する情報通信手段(22)と、前記情報通信手段にて前記規定取得情報を未取得である場合、当該ノード自身を受取先ノードとし、前記規定取得情報の発信元となるノードを発信元ノードとし、前記発信元ノードと前記受取先ノードとの間の情報通信が途絶したことを表す途絶情報を、記憶装置(26)に記憶する情報記憶手段(24)とを有した複数のノードと
を備えた車載通信システム(1)にて、前記ノード間の情報通信を中継する中継装置(30)であって、
起動条件を満たすと、前記ノードのそれぞれから、前記情報記憶手段にて記憶装置に記憶された前記途絶情報を収集する情報収集手段(32,S310)と、
前記情報収集手段にて収集した途絶情報それぞれによって表された、前記発信元ノードから前記受取先ノードへの通信経路を設定するルーティング情報を生成するルーティング情報生成手段(32,S330)と
を備えることを特徴とする中継装置。
今日のみどころ
車載通信システムは、自動車の制御に直接関連するものであるので、高い信頼性が要求されるものと思います。バスに接続される機器が増えてネットワークが複雑化すると、人間の手作業による設定では効率が悪く、また、設定間違いや更新漏れなどのヒューマンエラーの要因となりえます。
そこで、通信の状況に応じて自動的に通信不能な通信ノードを見つけてルーティング情報を更新していくのが本発明のポイントです。すばらしい。
(用語)
ECU(Electronic Control Unit):電子制御ユニット。自動車のエンジン、エアコン、ABSやエアバッグなどの各種安全装備などの制御を行う組み込みシステムを指す。