【特許紹介】スマートエントリー機器が破壊されるとユーザへの危害を回避する特許発明(デンソー)

図1

 今回は、自動車のスマートエントリーに関する発明を紹介します。

 従来、装置が警告音を発すると犯人を刺激してしまい、ユーザが危害を加えらえる問題があります。

 この発明では、スマートエントリーの機器に特殊な操作または破壊されると、車載機を通じて緊急信号を送信します。これにより、ユーザが犯罪などに巻き込まれたことを外部に通知することができます。



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装置が警告音を発すると犯人を刺激し、ユーザが危害を加えらえる問題

 従来、車両などに搭載され、車両に物が接触したりすると警告音を発する装置があります。

 また、犯罪などに遭遇したユーザが特殊な操作をすると、外部に緊急信号を送信する車載装置や携帯電話端末があります。

 しかし、装置が警告音を発すると犯人を刺激してしまい、ユーザが犯人から危害を加えらえる恐れがあるという問題があります。

スマートエントリーの機器に特殊な操作または破壊されると、車載機を通じて緊急信号を送信

図2


図4

 この発明では、車両のスマートエントリー&スタートシステムが、緊急通報の機能をあわせもつように構成されています。

 スマートエントリーの携帯機に対して、通常の鍵の解錠又は施錠の操作とは異なる特別な操作をユーザがすると、携帯機は、車両の車載機に緊急信号を送信します。また、携帯機が破壊された場合にも、緊急信号を送信します。

 このとき、LEDなどの表示部を変化させたり、音を出したりといった、人間に認識可能なことをしないこともポイントです。

 緊急信号を受信した車載機は、緊急通報センタに緊急通報を行います。

 このようにすることで、犯人を刺激することなく、ユーザが犯罪などに巻き込まれたことを外部に通知することができます。

 特許第6248826号 株式会社デンソー
 出願日:2014年6月24日 登録日:2017年12月1日

【課題】
犯罪等に遭遇した際、安全且つ確実に犯罪等の発生を通報できるようにする。
【請求項1】
 車両に搭載された車載機(20)と、前記車載機と無線通信を行う携帯機(10)とを有する車両用無線通信システム(1)であって、
 前記携帯機は、
 自装置に対応付けられた対応車両に搭載された前記車載機と無線通信を行い、予め定られた処理を行う携帯機側制御手段(11,12,13)と、
 前記処理の実行を指示するための操作部への操作、又は、前記携帯機の筐体の全部或いは一部が破壊されたことに応じて、前記対応車両及び他の車両に搭載された前記車載機に、緊急信号を送信する緊急信号送信手段(S105)と、
 を備え、
 前記車載機は、
 自車両を前記対応車両とする前記携帯機と無線通信を行い、予め定められた処理を行う車載機側制御手段(21,22,23)と、
 前記緊急信号を受信すると、自車両の外部に設けられた外部装置(70)に対し、緊急事態が発生した旨を通報する緊急通報を行う通報手段(S210)と、
 を備え、
 前記携帯機側制御手段により行われる処理と、前記車載機側制御手段により行われる処理とは、前記対応車両の施錠又は開錠を行うため処理であること、
 を特徴とする車両用無線通信システム。

今日のみどころ

 スマートエントリーの携帯機への特殊な操作や破壊がされると、車載機を経由して緊急通報センターに通報がなされます。

 車両の車載機が緊急通報センターと通信できることをうまく利用しています。

 このように、通信の機能の全部をもつようするのではなく、もともとの機能をうまく利用するのも良いアイデアになります。