ユーザの状況に適応してコンテンツを提供するカーナビの特許発明(デンソー)を紹介

図1

 今回は、カーナビに関する特許発明を紹介します。

 従来、ユーザの状況によっては、カーナビが提供するコンテンツをユーザが見ることができない問題という問題があります。

 この発明では、車両に乗車しているユーザのスマホの状態を把握してユーザへのコンテンツの送信を制御します。これにより、ユーザの状況にあわせてコンテンツを提供し、ユーザがサービスを受けることができるようになります。

 特許第6224386号 株式会社デンソー
 出願日:2013年9月9日 登録日:2017年10月13日



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

ユーザの状況によってはユーザがコンテンツを見られない問題

 ユーザの携帯電話やスマホなどの情報端末に、ユーザがほしいコンテンツを配信するサービス(エージェントサービス又はコンシェルジェサービス)があります。

 このようなサービスでは、ユーザが興味をもっている分野などを予めサーバに登録しておきます。そして、サーバに登録しておいたユーザが興味を持っている分野のニュースなどがユーザに自動で配信されます。このようなサービス形態は、PUSHサービスともよばれます。

 しかし、従来のPUSHサービスでは、ユーザの状況にかかわらず、サーバからユーザに一方的にコンテンツが配信されていました。そのため、ユーザの状況によってはユーザがコンテンツを見られない場合があるなど、ユーザが十分にサービスを享受できないという問題があります。

スマホの状態からユーザへのコンテンツの送信を制御

図7

 この発明のコンテンツ提供システムは、ユーザが使用しているスマホの状態から、ユーザへのコンテンツの送信を制御します。

 具体的には、コンテンツ提供システムは、ユーザが使用しているスマホの状況に基づいて、ユーザのシーンを特定します。シーンというのは、ユーザが運転中であるか、仕事中であるかなどを特定する情報です。

 そして、ユーザのシーンに基づいて、ユーザに提供するコンテンツを選択します。ここで、ユーザが運転中であるときには、同乗者の有無を考慮してコンテンツを送信することがポイントです。このようにして、ユーザのシーンに合わせてコンテンツの送信を制御します。

 例えば、ユーザ宛のメールを送信するときに、同乗者がないときには、カーナビなどの車載機に送信し、ユーザがカーナビの画面でメールを閲覧できるようにします。一方、同乗者があるときには、ユーザのスマホに送信してスマホのディスプレイに表示させるようにします。これにより、同乗者にメールが見られないようにしてプライバシーを確保することができます。

【課題】
ユーザが使用するデバイスに対して、コンテンツのサービスを自動で提供可能なシステムにあって、ユーザの現在の状況を考慮して、ユーザ状況に適応した形態でコンテンツを提供することが可能なコンテンツ提供システム、サーバ及びコンテンツ提供プログラムを提供する。
【請求項1】
 コンテンツ出力部(18、25)を備えユーザが使用する複数のデバイス(12、13、16)と、コンテンツ提供用のサーバ(31)を備えた情報センタ(14)とを通信可能に接続し、前記情報センタ(14)からコンテンツを前記各デバイス(12、13、16)に提供するようにしたコンテンツ提供システム(11)において、
 前記情報センタ(14)のサーバ(31)は、
 前記各デバイス(12、13、16)から送信される情報に基づいてそれら各デバイス(12、13、16)の状態を把握するデバイス状態特定手段(33)と、
 前記デバイス状態特定手段(33)により特定された各デバイス(12、13、16)の状態から、前記ユーザの現在のシーンを推定するシーン推定手段(34)と、
 このシーン推定手段(34)により推定されたユーザのシーンから、該ユーザに提供するコンテンツを判断する判断手段(34)と、
 前記シーン推定手段(34)の推定及び前記判断手段(34)の判断に基づいて、前記コンテンツを送信するデバイス(12、13、16)を決定するデバイス選択手段(36)とを備え、
 前記デバイス選択手段(36)は、前記シーン推定手段(34)によりユーザが車両(16)を運転していると推定された場合には、状態としての車両(16)の同乗者の有無を考慮してコンテンツを送信するデバイス(12、13、16)を選択することを特徴とするコンテンツ提供システム。

今日のみどころ

 技術開発では、従来できなかったことをできるように新しい技術を開発していきますが、技術的な課題を解決しても、ユーザの心理面の課題など、別の問題で使いにくいこともあります。

 そのような問題をまた別の技術で解決していく、そうやって技術を発展させていきましょう。