すれ違い通信をするスマホや携帯型ゲーム機において、すれ違い通信で、通信の双方向性が保証されない問題を解決する発明です。
この発明の通信システムは、通信端末が受信する識別データをサーバに集め、このデータに基づいてサーバが双方向性を判断します。ユーザ同士のコミュニケーションの機会を提供する発明です。
特許第6036675号 カシオ計算機株式会社
出願日:2013年12月25日 登録日:2016年11月11日
すれ違い通信で、通信の双方向性が保証されない問題
スマホや携帯型ゲーム機同士が近づいたときに自動的に無線通信を行う、すれ違い通信が用いられています。無線通信の例は、BLE(Bluetooth Low Energy)です。ゲーム機では、ニンテンドーDS/ニンテンドー3DSなどがすれ違い通信に対応しています。
一方、スマホでは、SNSのアカウント名などの識別データを交換することに利用されています。同一のイベントに参加したユーザ同士のコミュニケーションの機会を提供できます。
すれ違い通信は、接続を確立することなく通信をするので、相手からのデータを受信したが、自装置が送信したデータが相手に届いていないという状況が生じ得ます。つまり、通信の双方向性が保証されないという問題があります。
通信端末が受信する識別データをサーバに集めてサーバが双方向性を判断
この発明の通信システムでは、各通信端末は、自装置の識別データを送信する送信処理と、他の通信端末の識別データを受信する処理を切り替えて実行します。そして、各通信端末は、他の通信端末から受信した識別データをサーバに送信します。
サーバは、当該通信端末が他の通信端末から受信した識別データを各通信端末から受信します。そして、各端末から受信した識別データを参照して、受信漏れが生じた通信端末を特定します。
具体的には、通信端末Aが、通信端末Aの識別データを受信した通信端末Bの識別データを受信しているか否かを判定します。これにより、通信端末AとBとの間で双方向の識別データのやりとりができているかが確認されます。他の通信端末同士でも同様の判定がなされます。
これにより、通信端末同士の通信の双方向性が確認されます。
すれ違い通信における受信漏れを抑制することができ、仮想的に通信の双方向性を確保することができる通信システム、サーバ、通信方法、サーバの情報特定方法及びプログラムを提供する。
【請求項1】
端末間で所定の通信プロトコルによる無線通信を行う複数の通信端末と、前記複数の通信端末と所定の通信回線を介して接続されるサーバと、を備える通信システムであって、
前記複数の通信端末は、
他の通信端末から送信された当該他の通信端末を識別するための識別情報を受信する第一の受信手段と、
前記第一の受信手段により受信された識別情報を前記所定の通信回線を介して前記サーバに送信する第一の送信手段と、を備え、
前記サーバは、
前記通信端末から送信された識別情報を受信する第二の受信手段と、
前記第二の受信手段により受信された識別情報に基づいて、前記複数の通信端末のうち、識別情報の受信漏れが生じた通信端末を特定する特定手段と、
を備えることを特徴とする通信システム。
今日のみどころ
通信端末同士で実際にやりとりしたデータをサーバに集め、サーバが通信端末同士の双方向の通信ができているかどうかを判断することで、すれ違い通信の双方向性を確保します。
とてもシンプルなアイデアなので、請求項の記載を先に読んでしまうと、課題解決のための普通の技術だと思ってしまうかもしれません。しかし、他の研究例がなく、新規性、進歩性などの要件を満たせば特許がとれます。
たくさん特許文献を読むと、どんな感じの技術で特許がとれるか、なんとなくわかるようになると思います。この感じをつかんで維持できるように、日々勉強しましょう。