車両とスマホのGPSを利用して停車車両内での乗車位置の推定精度を上げる特許発明 SUBARU

図1

 従来、停車している車両内でのユーザの乗車位置の推定の精度が低いという問題がありました。

 この発明では、車両と端末で取得される、2つの時刻の位置情報を用いて位置をユーザの乗車位置を推定します。停止している車両であっても、過去に移動していたときの2つの時刻の位置情報を使うことにより、ユーザの乗車位置の推定をすることができます。

 特許第6161216号 株式会社SUBARU
 出願日:2015年11月30日 登録日:2017年6月23日



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停車車両内でのユーザの乗車位置の推定の精度が低い問題

 自動車などの車両は、GPSによって現在位置の位置情報を取得することができます。位置情報は、例えばカーナビゲーション装置の道案内に利用されます。

 また、スマホなどの情報端末もGPSによって現在位置を取得することができます。ユーザのスマホが取得した位置情報に基づいてユーザの車両内における乗車位置を取得する技術もあります。

 しかし、GPSによって位置情報を取得する場合、車両が停止していると、位置情報に大きな誤差が含まれるという問題があります。車両が停止していると、同一のGPS衛星からの電波だけを受信し続けるためです。

 そのため、車両が停止しているときの位置情報に基づいてユーザの乗車位置を推定しようとすると、車両が取得する位置情報に含まれる誤差のせいで、ユーザの乗車位置の推定がうまくいかない、精度が低いという問題があります。

車両と端末の2つの時刻の位置情報を用いて位置を推定

図2

 この発明の車両は、車両の位置情報とともに、乗車しているユーザのスマホなどの情報端末の位置情報を通信によって取得します。取得する位置情報は、2つの時刻に、異なる位置で取得された位置情報を含んでいます。車両とスマホとの通信は、例えばBluetooth又はWi-Fiのような近距離無線通信です。

 そして、2つの時刻の位置情報から、車両や情報端末の進行方向を解析します。各位置情報は誤差を含んでいますが、2つの時刻の位置情報を用いて、それらの誤差を減らすように回転移動や平均の演算をすることで、車両におけるユーザの乗車位置を推定します。

 これにより、ユーザの乗車位置の推定をすることができます。停止している車両であっても、過去に移動していたときの2つの時刻の位置情報を使うことによって、ユーザの乗車位置の推定をすることができます。

【課題】
乗車するユーザーの乗車位置を精度よく推測可能な車両を提供する。
【請求項1】
 車両に乗車したユーザーの情報端末と通信可能であり、前記情報端末が前記車両の走行中に計測して発信した位置情報と前記ユーザーが前記情報端末に入力した入力情報とを受信する通信部と、
 前記車両に搭載可能であり、前記位置情報及び前記車両の進行方向情報から、前記ユーザーの前記車両への乗車有無と前記ユーザーの前記車両内での乗車位置とを推測する制御部と、
 を有し、
 前記通信部は、少なくとも、第1時刻における前記情報端末が計測した第1位置情報と第2時刻における前記情報端末が計測した第2位置情報とを受信し、
 前記制御部は、
  前記第1時刻における前記車両の位置を示す第1基準位置情報を取得すると共に、前記第2時刻における前記車両の位置を示す第2基準位置情報を取得し、
  前記第1位置情報と前記第2位置情報とを同一の方向における情報となるように前記進行方向情報を用いて回転移動させ、
  前記第1基準位置情報と前記第2基準位置情報とが同一の位置を示す情報となるように、回転移動後の前記第1位置情報と前記第2位置情報とを平行移動させ、
  平行移動後の前記第1位置情報と前記第2位置情報とを用いて、前記乗車有無と前記乗車位置とを推測し、
  推測された前記乗車位置を示す乗車位置情報と前記入力情報とに基づいて前記車両の車載機器を制御する
 車両。

今日のみどころ

 GPS受信機が車両だけでなくスマホにも搭載されるのが普通になってきています。それらの両方を利用した技術を検討してみるのもおもしろいです。

 人工衛星の「みちびき」のおかげで、日本でのGPSの精度が上がると思います。高い精度だと誤差数センチまで識別できる可能性があると言われています。これまで精度の問題で実現できなかったことができるようになります。おもしろい発明が生まれるチャンスですね。