今回は、自動車の電子キーについての特許を紹介します。
従来、電子キーが車室の内部にあるか外部にあるかを特定する精度が低い、また、車載アンテナ故障時に電子キーが使えないという問題があります。
この発明では、故障した車載アンテナを除いたアンテナからの信号強度で電子キーが車室内にあるか車室外にあるかを特定することができます。これにより車載機のアンテナが一部故障した場合でも電子キーが使えます。
電子キーが車室の内部か外部か特定する精度が低い、車載アンテナ故障時に使えない問題
メカニカルキー(物理的な鍵、物理キー)を用いずに自動車のドアの施錠や解錠、エンジンのスタートを行うシステムがあります。ドアの施錠や解錠の機能はキーレスエントリー、スマートエントリーと呼ばれていて、エンジンのスタートの機能はプッシュスタートなどと呼ばれています。
ユーザは、メカニカルキーの代わりに、無線通信をする電子的なキー(電子キー)をもっていて、自動車側に搭載されている車載機との無線通信によって認証した後に、ドアの施錠や解錠、エンジンの始動を行うことができます。
このとき、ユーザが、つまり、電子キーが、自動車の内部にあるのか、外部にあるのかを特定することが必要です。しかし、特定の精度が低い、アンテナが故障した場合にうまく動作しないなどといった問題があります。
故障した車載アンテナを除いたアンテナからの信号強度で車室内外を特定
この発明のシステムでは、車両に複数のアンテナをもつ車載機が搭載されていて、ユーザがもつ携帯機が車室内にあるのか、または、車室外にあるのかを特定します。この携帯機は電子キーに相当します。
原則、車載機のすべてのアンテナが電波を出します。携帯機は各アンテナから受信する電波の信号強度を測定して車載機に渡します。
車載機は、車載機が測定した信号強度が、あらかじめ計測してあった、車室内での強度の値と、車室外での強度の値とのどちらと類似しているかを判断することによって、いま携帯機が車室内にあるか車室外にあるかを特定します。
車載機のアンテナのうちの一部が故障している場合には、車載機がその故障しているアンテナを特定し、そのアンテナ以外のアンテナによって電波を出します。携帯機は各アンテナから受信する電波の信号強度を測定して車載機に渡します。
この場合、車載機が測定した信号強度が、あらかじめいろいろな故障のパターンについて計測してあった、いま故障しているアンテナを除いた場合の車室内での強度の値と、車室外での強度の値とを用いて、いま携帯機が車室内にあるか車室外にあるかを特定します。
このようにして、複数のアンテナのうちの一部が故障している場合でも、携帯機が車室内にあるか車室外にあるかを正確に特定することができます。
特許第6394774号 株式会社オートネットワーク技術研究所、住友電装株式会社、住友電気工業株式会社
出願日:2017年10月30日 登録日:2018年9月7日
車両に設けられた複数の車載アンテナの一部が故障した場合に、精度よく携帯機の車室内外判定を行うことができる車両用通信システムなどを提供する。
【請求項1】
車両の異なる位置に設けられた複数のアンテナにより信号を送受信する車載機と、前記複数のアンテナの内の一又は複数から送信された信号を受信し、受信した信号に応じた信号を送信する携帯機とを備える車両用通信システムであって、
前記車載機は、
前記車両の車室内空間を共通に包含する相異なる複数の領域毎に、前記複数のアンテナの内の一部のアンテナから送信される信号の受信信号強度を前記複数の領域の内外で予め測定して得られる測定箇所の内外別の統計値を、送信元のアンテナを識別する情報と対応付けて異なるアンテナの組別に記憶しておく記憶部と、
前記複数のアンテナの内の故障アンテナを検知する故障検知部と、
該故障検知部が検知した故障アンテナを除く残りのアンテナから使用するアンテナを選択する選択部と、
該選択部が選択したアンテナに対応する組の統計値を、前記複数の領域毎に、前記記憶部に記憶されている組別の統計値から読み出す読出部と、
該読出部が読み出した統計値と、前記残りのアンテナから送信される信号の前記携帯機にて測定される受信信号強度との間の統計距離を内外別に算出して比較することにより、前記携帯機が前記車両の車室内外のいずれに存在するかを判定する判定部と
を備え、
該判定部は、
前記複数の領域毎に、前記読出部が読み出した統計値と、前記選択部が選択したアンテナから送信される信号の前記携帯機にて測定される受信信号強度との間の統計距離を内外別に算出して比較することにより、前記携帯機が前記領域の内外のいずれに存在するかを判定する領域判定部を備え、
該領域判定部が全領域の内側にあると判定した場合に、前記携帯機が前記車両の車室内に存在すると判定する車両用通信システム。
今日のみどころ
車両の電子キーの関する発明で、電子キーが車室内又は車室外のどちらにあるかを正確に特定できるというものです。
けっこう細かく書かれているので、ちゃんと読んで理解するのがある程度大変でしたが、ポイントは、測定値をあらかじめ測定して決めておいた標本値と比較するというあたりだと思います。
どんなデータを測定に使うか、ここが結構新しいポイントですね。