【特許紹介】別の人に送信されたチケットデータを有効化できる電子チケットシステムの特許発明(楽天)

 今回はスマホ上のチケットのシステムについての特許を紹介します。

 従来、チケットデータが送信されたスマホ端末を忘れると会場に入れない問題があります。

 この発明では、別の人に送信されたチケットデータを有効化することで会場に入れるように制御します。二重の利用を抑制する仕組みもあります。これにより、チケットデータが送信されたスマホ端末を忘れても会場に入れるようになります。



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 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

チケットデータが送信されたスマホ端末を忘れると会場に入れない問題

 イベント会場などに入るチケットをスマホでできるようにした、電子チケットが利用されています。チケットデータをスマホにダウンロードして、スマホをチケットとして使ってイベント会場などにはいれるようになります。

 原則、1台のスマホに1つのチケットデータが発行されます。

 これに対して、1台のスマホに複数人分のチケットデータをダウンロードし、その後にチケットデータを複数人のスマホに転送するシステムもあります。

 このようなシステムでは、チケットデータが転送されたスマホをもたずにイベント会場に入場しようとしたり、スマホが故障したりすると、そのユーザは、イベント会場に入場できない事態になるという問題があります。

別の人に送信されたチケットデータを有効化することで会場に入れる

 この発明の電子チケットシステムでは、1台のスマホにその本人のチケットデータ(第1のチケットデータ)と、他人の分のチケットデータ(第2のチケットデータ)とが送信されます。

 また、自分の分のチケットデータ(第2のチケットデータ)は、「他人」のスマホにも送信されます。

 そして、「他人」のスマホが使えないときには、「本人」のスマホに送信されたチケットデータ(第2のチケットデータ)を有効化して使用することができます。

 「本人」のスマホに送信された、「他人」のチケットデータが有効化されると、「他人」のスマホに送信されたチケットデータは有効化されないように制御されるので、二重の利用が抑制されます。

 このようにして、「他人」が第2のチケットデータが送信されたスマホを持たずにイベント会場に入ろうとするとき、「本人」のスマホに送信された第2のチケットデータを利用してイベント会場に入ることができます。

 特許第6396529号 楽天株式会社
 出願日:2017年3月27日 登録日:2018年9月7日

【課題】
ユーザが電子チケットデータを取得した携帯端末を利用できない状況であっても、電子チケットデータが二重に利用されることを防止しつつ、該電子チケットデータの利用が予定される会場等の場所で該ユーザが電子チケットデータを適正に利用することが可能な電子チケットシステムを提供する。
【請求項1】
 グループに属する複数のユーザそれぞれが利用する複数の携帯端末と、情報処理装置と、を含む電子チケットシステムにおいて、
 前記複数の携帯端末のうちの少なくとも一の携帯端末は、
 前記一の携帯端末のユーザに対して発行された第1の電子チケットデータと、前記グループ内の他のユーザに対して発行された第2の電子チケットデータと、を取得する取得手段と、
 前記第2の電子チケットデータの利用要求を受け付ける受付手段と、
 前記第1の電子チケットデータと、前記利用要求が受け付けられた前記第2の電子チケットデータとがそれぞれ有効化されているか否かを確認する確認要求を送信する要求送信手段と、
 前記確認要求された前記電子チケットデータのうちまだ有効化されていない前記電子チケットデータを有効化させる有効化命令を受信する命令受信手段と、
 前記有効化命令に応じて、まだ有効化されていない前記電子チケットデータを利用できるように有効化する処理を実行する有効化手段と、
 を備え、
 前記情報処理装置は、
 前記確認要求を受信する要求受信手段と、
 記憶手段に記憶された、電子チケットデータが有効化されているか否かを電子チケットデータごとに示す有効化情報に基づいて、前記確認要求された電子チケットのうち有効化されてないと判定された電子チケットデータを有効化させる前記有効化命令を送信する命令送信手段と、
 を備えることを特徴とする電子チケットシステム。

今日のみどころ

 電子チケットシステムのチケットデータのやりとりに関する発明です。

 もともとのチケット(紙のチケット)のシステムをもっと便利にしようとして電子化すると、その一方で、不便になってしまう部分が出てきます。同じようなことは、いろいろな分野で起きています。

 そこで、発明によってその不便を解消する、というストーリで考えると発明が生まれやすいです。

 電子化する前にはできていたのに電子化することでできなくなったこと、これを発明にできるようにする。なんだか同じところをぐるぐる回っているだけのようにも思いますが、新規性や進歩性といった特許要件を満たせば、ちゃんと特許とれます。