複数の情報処理装置(コンテンツ再生装置)を備えるコンテンツ再生システムでの同期再生に関する発明です。
複数の情報処理装置のうちの子機が親機からカウント値を所定の周期で受信します。子機は、受信したカウント値に基づいて、自身のサンプル周波数を親機のサンプル周波数に合わせる補正処理を実行します。これにより、発振器の個体差などに起因するコンテンツの再生タイミングのズレを解消します。
特許第5418003号(特開2009-141563) ソニー株式会社
出願日:2012年4月12日 登録日:2013年11月29日
複数の装置でのコンテンツ再生タイミングのズレ
複数の情報処理装置(例えば、音楽コンテンツを再生するコンテンツ再生装置)を備えるコンテンツ再生システムでの同期再生に関する発明です。複数の情報処理装置は、それぞれ、コンテンツを再生するタイミングを決定するためのカウント値を独立にカウントアップさせています。
複数の情報処理装置は、設計上同じ周波数で発振する発振器を用いても、発振器の個体差などによりカウントアップのタイミングにズレが生じてしまいます。このズレにより、コンテンツを再生するタイミングが複数の情報処理装置間でズレてしまうという問題があります。
親機から子機へカウント値を送信してサンプル周波数を同期
この発明の情報処理装置では、親機から子機へカウント値を所定の周期で送信します。子機は、受信したカウント値に基づいて、自身のサンプル周波数を親機のサンプル周波数に合わせるようにカウント値を補正する補正処理を実行します。ここでサンプル周波数とは、カウント値を増加させる時間長の逆数の意味と考えられます。
具体的には、例えば、子機のサンプル周波数が親機より高い、つまり、子機のカウント値の増加が親機より速い場合には、子機が新たなサンプルを挿入することでサンプルの数を増やして、親機と同じ速度でコンテンツ再生が行われるように調整します。新たなサンプルは、その直前のサンプルのコピー、又は、前後のサンプルからの補間から生成されます。子機のサンプル周波数が親機より低い場合は上記と反対にサンプルを削除することで調整します。
これにより、親機と子機とで同期して、つまり同一タイミングで同一コンテンツを再生することができます。
なお、このシステムでは、再生対象のコンテンツは、親機から子機へ、UDPパケットのマルチキャスト送信により送信されています。
親機と子機とでコンテンツの再生タイミングを一致させる。
【請求項1】
他の装置に対して該他の装置が保持するカウント値を問い合わせる問い合わせ要求を所定の周期で送信する送信部と、
前記他の装置からのカウント値の返答を前記所定の周期で受信する受信部と、
前記受信したカウント値に基づいてサンプル周波数を前記他の装置と同期させる補正処理を前記所定の周期で実行する補正部と、
前記サンプル周波数に基づいて前記他の装置と同期してコンテンツを再生する再生部と、
を備え、
前記補正部は、
前回の所定の周期での補正処理実行後の前記サンプル周波数と前記他の装置のサンプル周波数との差に基づいて補正処理を実行する、情報処理装置。
今日のみどころ
数MHzで発振する発振器の微妙なタイミングのずれがあると、複数の装置により音声や映像を再生した場合に装置ごとの時間差の原因になります。そして、複数の装置から出力される音声を聞く、又は、映像を見ると、人間は、その時間差に気づくことができてしまうようです。一方、上記の発振器のタイミングのずれは、個体差による部分が大きいので、解消することが難しいようです。そこで、このズレを解消するのではなく、発振器のタイミングを使用する側でこのズレの影響を補正するというアイデアです。
ソフトウェアとハードウェアが絡む領域の技術では、このように、ハードウェア側の個体差をソフトウェア側で吸収するという戦略がよくとられると思います。