【特許紹介】エレベータの乗りかごの位置特定の信頼性を向上させる特許発明(東芝エレベータ)

 今回はエレベータの乗りかごの位置の特定方法についての特許を紹介します。

 従来、エレベータの制御のための無線通信の信頼性を高める必要があります。

 この発明では、巻上機と無線の受信強度の両方で乗りかごの位置を特定します。これらの整合性を用いてデータの信頼性を高めることができます。



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エレベータの制御のための無線通信の信頼性を高める必要

 従来、エレベータの昇降を制御するために、テールコードが用いられています。テールコードは、乗りかごと接続されたケーブルで、乗りかごの昇降に合わせて昇降するようになっています。

 テールコードを用いず、無線通信を用いてエレベータの制御をするシステムもあります。

 しかし、無線通信を用いる場合、エレベータの制御のために無線通信によるデータの信頼性を高めておく必要があります。また、エレベータの故障があったときにその故障を特定する必要があります。

巻上機と無線の受信強度の両方で乗りかごの位置を特定

 この発明のエレベータの制御システムでは、エレベータの乗りかごの昇降路に複数の無線通信の中継機が配置されます。また、乗りかごに無線通信装置が設置されています。無線通信の例は無線LANで、Wi-Fiもその一例になると思います。

 そして、乗りかごを上から引っ張るロープを巻上機によって巻き上げると、パルスジェネレータがパルスを発生させて、乗りかごの位置を出力します。

 また、昇降路に設置された複数の中継機それぞれが無線装置から受けた電波の受信強度情報からも、乗りかごの位置が特定されます。

 そして、パスジェネレータによって特定された乗りかごの位置と、受信電波強度から特定された乗りかごの位置とが整合する場合に、信頼性が高いデータであるとして処理することができます。

 特許第6393365号 東芝エレベータ株式会社
 出願日:2017年4月28日 登録日:2018年8月31日

【課題】
無線中継装置の状態を判別することにより、エレベータシステム全体の堅牢性を確保したエレベータ無線通信システムを提供する。
【請求項1】
 エレベータの乗りかごに設けられた無線装置と、
 前記乗りかごの走行方向に沿って設けられ、前記無線装置から送信された信号を受信する複数の無線中継装置と、
 前記乗りかごを昇降させる巻上機に設けられたパルスジェネレータと、
 前記複数の無線中継装置が設置されている位置が予め記憶されている記憶部と、前記複数の無線中継装置が前記無線装置から受信した信号の有無または強度を判定する信号判定手段と、前記パルスジェネレータの出力に基づいて前記乗りかごの位置を算出するかご位置算出手段と、前記信号判定手段の判定結果に基づいて最も信号強度情報の大きい無線中継装置の位置を前記記憶部から読み出して前記かご位置算出手段の算出結果との整合性を比較する比較手段と、を有する制御部と、
 を具備するエレベータ無線通信システム。

今日のみどころ

 エレベータの乗りかごの位置の信頼性の高さを、無線通信を用いて決定します。

 無線通信はケーブルがいらないので、特に長いケーブルが使われていた用途に適用すると利便性が高いといえます。いろいろな分野で活用できます。

 一方、ノイズによってデータがロスする心配があるので、何らかの対応が必要になります。

 いろいろな分野でケーブルを無線通信に置き換えることがどんどん進んでいます。無線通信の課題を、そのシステム特有の方法で解決すると、おもしろい発明が生まれますよ。