今回は、無線でのエレベータの制御に関する発明を紹介します。今日も一緒に勉強しましょう。
従来、無線でエレベータを制御するとき、端末が故障すると運行を停止しなければならないという問題があります。
この発明では、昇降路に配置された複数の端末からの電波で故障を判定します。これにより、端末の故障を特定することができます。
無線でエレベータを制御するとき、端末が故障すると運行停止する問題
従来、エレベータのドアの開閉の制御のためにテールコードが使われています。テールコードは、エレベータのかごの下に延びて取り付けられていて、制御システムに接続されているケーブルです。
この場合、建物が高層になると、エレベータの昇降距離が長くなるので、長いテールコードが必要になります。そこで、無線通信によって制御信号を伝える技術があります。
しかし、無線通信をする端末が故障すると、制御装置とかごの無線通信が途絶え、エレベータの運行を停止する必要があるという問題があります。
昇降路に配置された複数の端末からの電波で故障を判定
この発明のシステム(エレベータ無線通信システム)では、エレベータのかごの昇降路に間をあけて複数の無線端末が取り付けられています。エレベータのかごにも無線端末が取り付けられています。
エレベータのかごに取り付けられた無線端末は、昇降路に取り付けられた無線端末から電波を受信し、受信した電波の受信強度を送信します。
そして、その電波の受信強度から、昇降路に取り付けられた無線端末のうちのどれが故障したかを特定します。
具体的には、電波の受信強度から故障を検出したときのエレベータの位置の範囲を特定して、その範囲に設定回数以上に故障を検出したときに、その範囲の無線端末が故障と判定します。
このようにすることで、無線端末の故障を検出することができます。
特許第6657298号 東芝エレベータ株式会社
出願日:2018年5月24日 登録日:2020年2月7日
無線端末の故障を特定するとともに、エレベータの稼働率を向上する。
【請求項1】
昇降路内において複数の階床間を移動するかごと、
前記かごの運行を制御するエレベータ制御装置と、
前記エレベータ制御装置と接続され、前記昇降路内に離間して配置された複数の固定無線端末と、
前記かごに設けられたかご制御部と、
前記かご制御部に接続され、前記固定無線端末からの電波の電波強度を送信するかご無線端末と、
前記固定無線端末と前記かご無線端末のいずれかの無線端末故障を前記電波強度に基づいて検出する無線端末故障検出部と、
前記昇降路における前記かごの位置を検出するかご位置検出部と、
を有し、
前記無線端末故障検出部は、前記無線端末故障を検出したときの前記かごの位置に基づいて、前記固定無線端末の各通信範囲に対応するかご範囲を特定し、特定された前記かご範囲において所定の回数以上前記無線端末故障を検出したときに、特定された前記かご範囲に位置する前記固定無線端末が故障していると判定するエレベータ無線通信システム。
今日のみどころ
エレベータの制御を無線通信を使ってするときのための端末の故障判定の方法の特許です。
情報伝達の確実さをとるならケーブルによる有線通信のほうがよいという考え方もありますが、ケーブルが破損する可能性まで考えると無線通信のメリットもでてきます。無線通信はケーブルの破損の心配がないですから。
こういう考え方はエレベータだけでなく、他の状況にも適用できますね。
いろいろな分野で、有線通信を無線通信に置き換えるときに発生する問題を解決する、という方向性でアイデアを練るとよいトレーニングになります。
(メモ)エレベータ関連の用語:
昇降路 Hoistway
かご car
テールコード travelling cable
つり合いおもり counterweight