お薬カレンダの撮影画像を利用して遠隔地から患者の服薬を見守る発明 Windy

 従来のお薬カレンダーでは、保護者が遠隔地から患者の服薬の見守りができないという問題がありました。この問題を解決する発明です。

 この発明のシステムによれば、お薬カレンダーを撮影した画像をネットワーク経由で提供できます。遠隔地にいる保護者は、この画像を閲覧して患者の服薬の見守りをすることができるようになります。

 特許第6035469号 株式会社Windy
 出願日:2016年4月1日 登録日:2016年11月11日



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

お薬カレンダーで遠隔地からの服薬の見守りができない問題

 患者が朝昼夕夜に服用する薬を管理する「お薬カレンダー」が利用されています。

 従来のお薬カレンダーは、例えば、縦方向に7個、横方向に4個のポケットが並んで台紙に取り付けられています。縦方向の7個は、1週間の各日に対応していて、横方向の4個は、服用する時間帯(朝、昼、夕、夜)に対応しています。このポケットそれぞれに、各日の各時間帯に服用すべき薬があらかじめセットされています。患者は、各日の各時間帯にそのポケットから薬を出して服用します。

 従来のお薬カレンダーでは、患者の保護者などの他人が遠隔地から服薬を見守ることができないという問題がありました。

お薬カレンダーを撮影した画像をネットワーク経由で閲覧して見守り

 この発明の患者服薬見守りシステムは、まず、お薬カレンダーに特徴があります。お薬カレンダーの各ポケットがミシン目で切り離しやすいようになっており、また、間違って切り離した場合には元の位置に付着できるように付着部が設けられています。

 そして、そのお薬カレンダーを撮影するカメラが備えられており、カメラで撮影したお薬カレンダーのポケットの有無から、患者が服薬を怠っていないかどうかを判断します。そして、服薬を怠っている場合には、音や光で注意喚起します。

 また、このカメラは、例えばスマホやタブレット端末のカメラのように、撮影された画像をインターネットなどのネットワークを経由して遠隔地に提供できます。遠隔地にいる保護者などがインターネットを経由してお薬カレンダーの撮影画像を閲覧できます。これにより保護者が遠隔地から患者の服薬の見守りをすることができます。

【課題】
 患者が当面必要な一回服用分の薬剤だけを容易に取り出して携帯したり管理したりすることができ且つ薬剤師でない患者、近親者や介護士が薬を間違えてお薬カレンダーのポケット中に入れてしまうなどのリスクを無くすことができるお薬カレンダーを提供することを目的とする。また、本発明は、患者が自らの服薬を自分で管理するだけでなく患者の保護者などの他人も患者の服薬を見守ることが容易にできるお薬カレンダーを使用した患者の服薬見守りシステムを提供することを目的とする。さらに、本発明は、薬局の薬剤師又は患者が各一回服用分の錠剤をお薬カレンダー中の各ポケットなどに自分で入れる作業をする必要がなく個々の各患者に適合したお薬カレンダーを個別に自動的に製造することができるお薬カレンダー個別製造システムを提供することを目的とする。
【請求項3】
 一回服用分の薬剤をそれぞれ収容する各収容部が行方向及び列方向に複数個ずつ並ぶように配置され且つ前記各収容部の互いに隣接するもの同士が接続部を介して連接されて成る収容部連接体を含み、前記各収容部は前記収容部連接体から分離可能に構成されている「お薬カレンダー」であって、患者が、或る一日の中で薬剤を服用すべき複数の時間帯がそれぞれ来る毎に前記お薬カレンダー中の患者から見て最も下側の行の端部側の収容部又は最も上側の行の端部側の収容部を前記収容部連接体から分離する動作を当該行の全ての収容部が前記収容部連接体から分離されるまで順次繰り返し、さらに前記日の次の日以降も、前記の分離する動作を当該行の全ての収容部が前記収容部連接体から分離されるまで順次繰り返す動作をお薬カレンダー中の全ての収容部が無くなるまで順次繰り返すことが可能とされており、特定の色又は模様を有する背景物体と対向又は当接するように配置されているお薬カレンダーと、
 前記背景物体と前記お薬カレンダーを介して対向するように配置された撮像手段と、
 前記お薬カレンダー又は撮像手段の近傍に配置され、患者に対し注意を喚起し又は服薬を促すメッセージその他の情報(音又は光を含む)を出力する出力部と、
 服薬のため患者により1つの収容部が分離された後の収容部連接体又は背景物体の形状に関する情報を各服薬毎に区別して予め記憶しておく服薬後形状記憶手段と、
 前記撮像手段からの服薬のため患者により1つの収容部が分離された後の収容部連接体又は背景物体の形状に関する情報と前記服薬後形状記憶手段からの前記情報とに基づいて、前記患者が必要な服薬を怠っているとき、前記出力部を制御する制御手段と、
を備えたお薬カレンダーを使用した患者服薬見守りシステム。

今日のみどころ

 これからの高齢化の時代には、一人暮らしのお年寄りが増え、また、薬を常用しないといけない人も多くなると思います。本発明のシステムにより、お薬カレンダーの撮影画像から薬の服用がされているかを判定したり、保護者が遠隔から監視したりすることができます。時代のニーズにあった発明と言えると思います。すばらしい。

 なお、請求項1、2は、通信技術とは関係ないお薬カレンダー自体の発明です。お薬カレンダーを通信技術と絡めたシステムの発明は、請求項3に記載されているので、ここでも請求項3を紹介しています。請求項1のお薬カレンダー自体の特許性が認められたこともあって、請求項3のシステムの発明の認められていると言えそうです。

 また、早期審査制度を利用して、出願から7カ月で特許が登録されている点も注目ポイントです。