光回線の通信タイミングに基づいて消費電力を削減するONUの発明 NEC

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 この発明の光回線終端装置(ONU)では、光回線を終端する光インタフェースとユーザ端末を接続するUNIとを、OLTから受信するGate信号に基づいて連携させて省電力制御をします。

 これにより、OLTとユーザ端末との間で行われる通信に影響なく、UNIの消費電力を削減します。また、従属請求項にかかる発明では、上記と同様に光インタフェースの消費電力も削減します。

 特許第5811673号 日本電気株式会社
 出願日:2011年8月8日 登録日:2015年10月2日



 ※特許の本の紹介。
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従来の省電力制御は、光インタフェース又はUNIそれぞれ

 高速な通信ができる光回線をマンションや個人宅まで引き込む形態であるFTTHが普及しています。FTTHのネットワーク形態としてPON(Passive Optical Network)があります。PONにおける加入者側の端末であるONUは、光回線と接続する光インタフェースと、ユーザ端末(PCやIP電話)が接続されるUNI(User-Network Interface)を備えています。

 従来、光インタフェース、又は、UNIそれぞれで省電力制御が検討されていましたが、これらを連携させる制御はありませんでした。

OLTからのGate信号に基づいて光インタフェースとUNIとを連携させて省電力制御

 この発明のONUでは、光インタフェースとUNIとを連携させて省電力制御をします。(より詳細には、Sheddingモード方式のONUの省電力化を図ります。)

 ONUは、低電力駆動状態においてUNIの通信が行われるタイミングを取得し、その通信が行われるタイミングでUNIを省電力状態から通常の電力状態に移行させます。このタイミングは、OLTからUNIに送信される、帯域要求の有無を確認するGate信号により取得されます。これにより、OLTからユーザ端末への通信、又は、ユーザ端末からOLTへの通信のときに、OLTとユーザ端末との通信に影響なくUNIを通常電力状態に維持し、上記の通信がない場合に省電力状態に移行させることができます。

 また、従属請求項(請求項3)にかかる発明では、上記と同様に光インタフェースの消費電力も削減します。このようにして電力消費を削減します。

【課題】
通信回線を介してデータを通信する通信装置において、光インターフェイス側とUNI側を連携させ、OLTとユーザ端末の間の通信の確立の遅延を考慮して消費電力を制御する通信装置、通信システムおよび電力制御方法を提供する。
【請求項1】
 ネットワーク装置と端末装置との間に設置される通信装置であって、
 前記端末装置との通信を行う端末接続手段と、
 前記ネットワーク装置との通信を行う通信インターフェイス手段と、
 前記通信インターフェイス手段と前記端末接続手段との間でのデータの中継と、前記ネットワーク装置および前記端末装置との通信の制御を行うアクセス制御手段と、
 前記アクセス制御手段に接続され、前記端末接続手段に対する電源供給を制御する第一の電源制御手段と
を備え、
 前記第一の電源制御手段は、前記端末装置と通信を行うことが可能な起動状態と、前記端末装置と通信を行なわない低電力駆動状態とを含む複数の動作状態のうちの一つの動作状態に、前記端末接続手段を設定し、
 前記第一の電源制御手段は、低電力駆動状態にある前記端末接続手段を、前記通信インターフェイス手段と前記ネットワーク装置との通信が行われるタイミングに基づいて、起動状態に移行するよう電源制御を行う
ことを特徴とする通信装置。

今日のみどころ

 実施の形態には、OLT、UNI及びユーザ端末の通信の仕方が詳細に説明されており、PONにおける各装置の詳細な動作を読み取ることができます。一方、請求項は、技術的範囲をなるべく限定せずに上位概念化した表現で記載されており、広い権利範囲を得ることができていると思います。このやり方は特許ではよくやる方法ですが、この特許では顕著であると思います。

 このよな請求項の記載をする場合には、PONではない通信ネットワークにおける他の通信技術を含まないような記載が必要で、審査でも注意されたのではないかと思います。そのうえで権利化されたことは、発明のポイントを、従来技術を含まないように上位概念化することが、非常に上手であったといえるのではないかと思います。