【特許紹介】中継局が子局の起動時刻を設定して子局をスリープモードへ移行させる特許発明(NEC)を紹介

 今回は、低消費電力で広域をカバーするLPWAに関するを紹介します。今日も一緒に勉強しましょう。

 従来、LPWAで電波干渉を抑制しつつスリープモードへ移行する必要があります。

 この発明では、中継局が子局の起動時刻かインターバル時間を設定して、子局をスリープモードへ移行させる制御をします。これにより、電波干渉を抑制する送信スケジュールを設定し、適切にスリープモードを用いることで省電力に動作することができます。



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

LPWAで電波干渉を抑制しつつスリープモードへ移行する必要がある

 LPWA(Low Power Wide Area, 低消費電力で広域をカバーする)の通信技術があります。LPWAは、IoTの実現のための技術の1つです。

 LPWAでは、電波干渉が発生しやすいという問題があります。また、例えばバッテリによって長期間駆動する必要があります。

 そこで、LPWAでは、電波干渉を抑制する送信スケジュールを設定する必要があります。また、適切にスリープモードを用いることで省電力に動作する必要があります。

中継局が子局の起動時刻かインターバル時間を設定して子局をスリープモードへ移行制御


 この発明の無線通信システムは、電波干渉を抑制する送信スケジュールを設定し、適切にスリープモードを用いることで省電力に動作することができます。

 無線通信システムは、サーバ、親局、中継局、子局がこの順に接続された構成になっています。子局がデータを計測し、子局が計測したをサーバに送信することが、この無線通信システムの目的です。

 まず、中継局が、子局それぞれについてのインターバル期間または起動時刻を算出して、子局それぞれに送信します。

 ここで、インターバル時間は、子局がデータを送信する時間間隔であり、複数の子局が同時にデータを送信しないように設定されます。起動時刻は、スリープモードに移行する子局が、スリープモードから復帰する時刻です。

 インターバル時間または起動時刻を受け取った子局は、インターバル時間を受け取った場合にはインターバル時間を用いて起動時刻を計算し、その起動時刻にスリープモードから復帰する設定をしてスリープモードに移行します。スリープモードから復帰した子局は、データを計測して送信します。

 ここで、インターバル時間を計算する際に、データ送信時刻、分散時間、ホップ数および現在時刻に基づいてインターバル時間を計算(具体例は、明細書の段落0031参照)することがポイントです。

 このようにすることで、無線通信システムは、電波干渉を抑制する送信スケジュールを設定し、適切にスリープモードを用いることで省電力に動作することができます。

 特許第6813202号 NECプラットフォームズ株式会社
 出願日:2019年9月4日 登録日:2020年12月21日

【課題】
電波干渉の発生を抑制し、かつ、省電力でマルチホップを行うことができる無線通信システムを提供する。
【請求項1】
 サーバと、
 ネットワークを介して前記サーバと通信する親局と、
 前記親局と通信する中継局と、
 データを測定して前記データを前記中継局に送信する複数の子局と、を備え、
 前記中継局が、前記複数の子局が同時に電波を発しないように、前記複数の子局のそれぞれのインターバル時間を算出し、
 前記中継局が、前記算出したインターバル時間を前記複数の子局のそれぞれに送信し、又は、前記インターバル時間と現在時刻とを加算して前記複数の子局のそれぞれの起動時刻を算出し、前記起動時刻を前記複数の子局のそれぞれに送信し、
 前記複数の子局のそれぞれが、前記中継局から受信した前記インターバル時間と現在時刻とを加算して起動時刻を算出し、前記起動時刻を保存してスリープモードに移行し、又は、前記中継局から受信した前記起動時刻を保存してスリープモードに移行し、
 前記複数の子局のそれぞれは、前記起動時刻になると、スリープモードから復帰してデータの測定及び前記データの前記中継局への送信を行い、
 前記中継局が、前記複数の子局のうちの1つから前記データを受信すると、前記データを前記親局に送信し、
 前記親局が、前記中継局から前記データを受信すると、前記データを前記サーバに送信し、
 前記中継局は、前記インターバル時間の算出の基準となるデータ送信時刻、分散時間、ホップ数、及び現在時刻に基づいて、前記複数の子局のそれぞれの前記インターバル時間を算出する、
 無線通信システム。

今日のみどころ

 親局と子局の間に位置する中継局が、子局の起動時刻などを定めて子局のスリープモードへの移行を制御するのがポイントであると思います。

 おそらく、親局が上記の機能をもっているとすれば、普通のことだと思うのですが、中継局がこの機能を持っているのが新しいと認められたのだと思います。単純にこのように考えると特許性が微妙になるような気もしますが発明の新しさを上手に説明できた結果、特許が認められているのだと思います。すばらしい。