【特許紹介】トンネル掘削のための探査システムを無線で構築する特許発明(安藤・間)

 今回は、トンネル掘削のための探査に関する発明を紹介します。3分で理解できます。

 従来、トンネル掘削の調査システムにリード線があるので設置作業が煩雑であるという問題があります。

 この発明では、トンネル掘削の調査システムを無線で構築して弾性波のデータを送信します。これにより、リード線が不要になって、設置作業の煩雑さが解消します。



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

トンネル掘削の調査システムの設置作業が煩雑

 トンネル工事を安全に行うために、トンネルの掘削前に地質の調査をします。従来は、発破により発生する弾性波の速度を測定する発破前方探査の手法があります。

 しかし、従来の手法では、弾性波受信器、点火器、記録器などがリード線つまり電気コードで接続されていました。

 そのため、各種機器の設置作業が煩雑であるという問題がありました。また、コードが切れるとデータ取得が途切れてしまうという問題がありました。

トンネル掘削の調査システムを無線で構築して弾性波のデータを送信

 この発明では、岩盤に差し込まれたロックボルトと、そのロックボルトに取り付けられた地震波計測部とを用いて測定をします。

 ロックボルトは、岩盤にねじこまれて固定されています。そして、岩盤を介して伝わってくる、発破の弾性波を受信して、地震波計測部に伝えます。
 
 地震波計側部は、ハウジングの内部にジオフォン(地震計)を備えています。ジオフォンが、ロックボルトから伝わってくる弾性波を計測します。そして、ジオフォンが計測した信号を、無線回路によって無線信号で記録器に送信します。

 このようにすることで、計測した弾性波を無線で記録器に蓄積しておくことができ、リード線が不要になります。

 特許第6335204号 株式会社安藤・間
 出願日:2016年3月15日 登録日:2018年5月11日

【課題】
トンネル坑内を電気配線等で埋め尽くすことなく、トンネル施工、坑内作業に影響せず前方探査を可能にするとともに、各種信号を受信する機器の増設を行う。
【請求項1】
トンネル坑内の掘削発破を設置した切羽から後方へ所定の距離離れた位置において、吹付コンクリートが設置されたトンネル壁の岩盤に差込み固定され、掘削発破により発生する弾性波を受信するロックボルトと、
前記ロックボルトの基端に取り付けられた地震波計測部とから構成され、
前記地震計測部は、
 内部が中空で各種計測機能部を収容する箱体からなり、箱体の中心部分には中空部が形成された支柱部を有するハウジングと、
 前記トンネル壁の吹付コンクリート表面側に設置されて前記ロックボルトの基端部にネジ係合する円柱ジグと、
 前記ハウジングの支柱部において、前記中空部内に配置された前記円柱ジグに対してネジ係合し、前記ハウジングを前記吹付コンクリート表面側に固定取り付けする固定ボルトとを有し、また前記地震計測部は、
ハウジングの内部に収容されたジオフォンと、
ジオフォンに接続され前記ロックボルトで受振した弾性波を計測する計測回路と、
計測回路により生成された計測信号を無線信号として発信させる無線回路と、
を備えており、
 前記固定ボルトを前記円柱ジグに対して締め込むことにより、前記ハウジングは前記吹付コンクリート表面に強固に結合される、
ことを特徴とする地震計。

今日のみどころ

 トンネル掘削のための調査のシステムを無線で構築することができます。

 無線通信の観点ではそれほど新しいポイントはないような気もしますが、地震計や発破前方探査装置として考えると新しさがあるということだと思います。

 こういう場合、地震計の機能と無線機能との関係を結び付けながら発明を検討して請求項を記載すると、従来技術との差がわかりやすくなると思います。