【特許紹介】停電時にも動作して地震の情報を無線伝送するオンサイト警報システムの特許(ミサワホーム)

 今回は、地震のオンサイト警報システムの特許発明を紹介します。

 従来、地震で停電になるとオンサイト警報が機能しない問題があります。

 この発明では、オンサイト警報システムが停電時に非常用電源で動作して無線で情報を伝送します。これにより、停電時にも地震計の情報を外部に伝送し、オンサイト警報を機能させることができます。

地震で停電になるとオンサイト警報が機能しない問題

 従来、地震計で地震の初期微動の観測データを解析することで速報(緊急地震速報)をする技術があります。

 緊急地震速報に用いられる地震計(観測地点)は、日本全国に亘って配置されているものの、数があまり多くない状況です。例えば、東京23区には5ケ所のみあります。

 そこで、オンサイト警報の技術があります。この技術では、より震源に近い地域に設置された地震計の情報に基づいて警報を発することができます。

 しかし、大きな地震が発生すると停電になる可能性があり、その場合、電力供給がストップしてしまいます。電力供給がストップすると、地震計が機能しなくなり、また、情報伝達のためのネットワークの機器が機能しなくなり、オンサイト警報が機能しなくなるという問題があります。

オンサイト警報システムが停電時に非常用電源で動作して無線で情報を伝送


 この発明は、オンサイト警報び技術関する発明です。

 複数の建物の基礎の地震計と、「地域被災度判定手段」と、「全国被災度判定手段」とがネットワークによって接続されています。また、地震計は、非常用電源を備えており、停電時に電力が供給されるように制御されます。

 ここで「地域被災度判定手段」とは、地震計からの地震情報を集約して被災度を分析処理する機能です。また、「全国被災度判定手段」とは、全国各地からの地震情報を集約して被災度を分析処理する機能です。

 そして、地震計は、停電時には、非常用電源を用いて無線通信部が起動し、地震に関する情報を中継アンテナに伝送します。伝送された地震に関する情報に基づいて、オンサイト警報の処理がなされます。

 このようにして、停電時にも地震計の情報を外部に伝送し、オンサイト警報を機能させることができます。

請求項1がとても長い

 この発明のポイントは、地震計が非常用電源によって停電時に無線通信で情報を伝送することだと理解しました。

 上記では請求項1に記載された内容のうちのほんの一部を紹介しましたが、実際には下記のとおり、とても長い。請求項1にとても多くの情報が含められています。

 請求項1にたくさんの情報を詰め込むと、それだけ特許の範囲が狭くなり、これにより、この特許の範囲に含まれる先行技術が少なくなるので特許を取りやすくなる傾向があります。

 例えば、特許の範囲が狭くてもいいので、どうしても特許を取りたい技術である場合にこのような戦略をとることがあります。具体的には、研究成果として特許を取得することを約束している場合とか、ピンポイントで他社の実施を排除したい場合とか、がありえます。

 また、特許公報で請求項1のほとんどの部分に下線が引かれています。これは、請求項1のほぼ全をがっさり補正により書き換えたことで特許が認められたことを示しています。出願当初は請求項1を広めに記載しておいて、審査段階で権利をとるために請求項1を狭くする戦略があったのか、または、出願当初とは違った部分をポイントとして特許を取る必要がでてきたというような事情があったのかもしれません。

 特許第6030510号 ミサワホーム株式会社
 出願日:2013年6月24日 登録日:2016年10月28日

【課題】
停電時であっても地震情報の確実な伝送を可能とするオンサイト警報のネットワークシステムを提供する。
【請求項1】
 震源近くの建物に設けられた地震計の情報に基づいて警報を発するとともに、震度や被災状況に応じた地震対応を行なうためのオンサイト警報のネットワークシステムにおいて、
 全国に多数ある分譲地、ならびに学校等の教育文化施設や商店・公園といった日常的に利用される生活環境施設を含んだ前記分譲地外の地域のそれぞれにある複数の建物の基礎に、警報機能および被災度判定機能を有する前記地震計がそれぞれ設置されており、
 前記多数の分譲地内のそれぞれには、前記複数の建物に設置された前記各地震計からの地震情報を集約して被災度等を分析処理する地域被災度判定手段が設けられ、前記各分譲地には、前記複数の建物に設置された前記各地震計と前記地域被災度判定手段とを通信可能に接続することによって構成された第一通信ネットワークが構築され、
 各地の分譲地の地震情報が集約される中央情報処理センターには、各地の分譲地の地震情報を集約して被災度等を分析処理する全国被災度判定手段が設けられ、前記第一通信ネットワークと前記中央情報処理センターとの間には、前記地域被災度判定手段と前記全国被災度判定手段とを通信可能に接続することによって構成された第二通信ネットワークが構築され、
 前記各分譲地外の複数の建物の基礎には、警報機能および被災度判定機能を有する前記地震計がそれぞれ設置されており、前記各分譲地外の複数の建物と前記中央情報処理センターとの間には、前記各地震計と前記全国被災度判定手段とを通信可能に接続することによって構成された第三通信ネットワークが構築され、
 前記各地震計は、地震の揺れによって生じる加速度を検出する加速度センサと、当該加速度センサからの地震検出信号に基づいて震度を算出する震度算出部と、前記加速度センサによって計測された加速度に基づいて前記建物の変形角を算出する変形量算出部と、前記震度算出部および前記変形量算出部の制御を行う地震計の制御部と、これらを収容するケースとを備え、
 さらに前記各地震計は、接続線によって接続されて前記建物内部の内壁に設置される地震表示計を含んで構成され、
 前記各地震表示計は、前記各地震計の前記加速度センサによって検出された加速度とその方向およびこの加速度に基づいて算出された震度、被災度ランク、損傷度、行動指針コメント、地震の発生日時、時刻、履歴等の地震情報を表示するものであり、当該地震情報を表示する表示部と、データ記憶部と、警報発生手段と、通信手段と、これらを制御する地震表示計の制御部を備えており、
 前記データ記憶部には、前記警報発生手段から警報を発生させるための警報発生プログラムが記憶されており、
 前記通信手段は、外部通信網に接続され、前記地震計の制御部によって、地震が生じるごとに自動的に地震情報を外部に送信するように設定されており、
 前記各地震計および地震表示計は、系統電源からの電力に基づいて動作するように設定されており、
 前記各地震計および地震表示計が備えられた全ての建物は、当該地震計に対して個別に接続されるとともに当該地震計に対して電力を供給するための複数の非常用電源を備え、
 前記各地震計および地震表示計と前記複数の非常用電源とは、停電時に、前記各地震計および地震表示計が、少なくとも前記複数の非常用電源のうちの一つの非常用電源から電力供給可能に接続され、
 前記各地震計の制御部は、前記複数の非常用電源のうち当該地震計が電力供給を受ける非常用電源を判定する制御機能を備え、
 さらに前記各地震計は、系統電源が遮断されて建物が停電し、当該地震計への電力供給がストップし、前記地震表示計への接続も遮断された場合にも当該地震計を通信可能な状態とする停電時通信システムを備えており、 当該停電時通信システムは、前記非常用電源を含み、かつ非停電時に休止し、前記地震計の電力供給電源を判定する前記制御機能により、前記系統電源から前記非常用電源に代わった場合に起動する無線通信部と、当該無線通信部を制御する前記地震表示計の前記制御部を備え、
 前記無線通信部は、前記地震表示計の前記制御部から送られてくる制御信号に基づいて起動した際に、起動時に判明している地震情報をすぐさま前記地域被災度判定手段や直近の中継アンテナへと伝送するように設定されていることを特徴とするオンサイト警報のネットワークシステム。

今日のみどころ

 地震が起きたときのためのオンライン警報の特許発明を紹介しました。

 請求項1がここまで長い特許はめずらしいかもしれません。内容的には、ここまで限定する必要もないような気もしますが、なにか戦略または事情があった可能性もあります。

 請求項1が長い特許の例として把握しておきましょう。