今回は、住宅での地震検知に関する発明を紹介します。
従来、震源に近い地域では緊急地震速報が有効でないという問題があります。
この発明のネットワークシステムでは、建物の基礎に設置した地震計で地震を検知するとともに、ネットワークを介して住人に連絡します。これにより、震源に近い地域でも、被災状況や震度に応じた迅速な対応ができるようになります。
特許第6179962号 ミサワホーム株式会社
出願日:2016年4月15日(分割の原出願日:2013年6月24日) 登録日:2017年7月28日
震源に近い地域では緊急地震速報が有効でない
従来、地震の震源地近くの地震計でとらえた初期微動に基づいて、各地に地震の発生を知らせる緊急地震速報があります。緊急地震速報は、全国に設置した地震計を使って気象庁が提供しています。
緊急地震速報では、地震計が検知した初期微動に基づいて各地の震度を予想して通信回線を経由して端末に通知することを秒単位で行う必要があります。また、少しでも早く通知をすることが望まれています。
しかし、気象庁が設置している地震計の数は、例えば東京23区で5か所というように、それほど多くないので、震源に近い地域では、緊急地震速報があまり有効でないという問題がありました。
建物の基礎に設置した地震計で地震を検知、住人に連絡
この発明のネットワークシステムは、「オンサイト警報」のネットワークシステムです。建物(例えば分譲地の住宅)の基礎に地震計が取り付けられています。また、地震による被災状況を建物内で表示する地震表示計が建物内に配置されています。
地震計が揺れを検知すると、その揺れの大きさから、震度や建物の変形量に基づく被災度ランクなどを推定し、それを地震表示計が表示します。被災度ランクは、建物の変形量と被災度ランクと対応付けた被災度判定表によって得られます。
また、地震計からの地震情報を、中央情報処理センタを介して、建物の住人が使用する携帯端末に通知します。
このようにすることで、震源に近い地域でも、被災状況や震度に応じた迅速な対応ができるようになります。
震源に近い地域と当該地域に建築されたそれぞれの建物に対する迅速な地震対応を可能とするオンサイト警報のネットワークシステムを提供する。
【請求項1】
震源近くに設けられた地震計の情報に基づいて警報を発するとともに、震度や被災状況に応じた地震対応を行うためのオンサイト警報のネットワークシステムにおいて、
全国各地に複数の建物が建築され、
前記複数の建物の基礎には、警報機能および被災度判定機能を有する前記地震計がそれぞれ設置されており、 前記複数の建物には、全国各地に多数ある分譲地に建築された複数の建物と、当該分譲地の外部に建築された複数の建物が含まれており、
前記分譲地に建築された複数の建物と、前記分譲地の外部に建築された複数の建物のそれぞれの前記基礎に設置された各地震計からの地震情報は、地震情報が集約される中央情報処理センターに対して、互いに異なる通信ネットワークを介して伝送されるように構成されており、
前記中央情報処理センターは、前記建物に居住する住人が使用する情報端末および/または震源近くに位置する情報端末と通信可能に接続され、前記警報の発生時に、当該情報端末に対し、震源近くに設けられた前記地震計からの地震情報を伝送し、
前記各地震計は、地震の揺れによって生じる加速度を検出する加速度センサと、当該加速度センサからの地震検出信号に基づいて震度を算出する震度算出部と、前記加速度センサによって計測された加速度に基づいて前記建物の変形角を算出する変形量算出部と、前記震度算出部および前記変形量算出部の制御を行う地震計の制御部と、これらを収容するケースを備え、
さらに前記各地震計は、接続線によって接続されて、地震の被災状況を建物内に表示する地震表示計を含んで構成され、
前記地震表示計は、
前記建物内に設けられたケースと、このケース内に設けられた表示部と、
前記ケース内に設けられ、地震が発生した際に、前記変形量算出部によって算出された建物の変形量に基づいて、前記建物の変形量と前記建物の被災度ランクとを対応付けて記憶しているデータ記憶部から前記変形量に対応付けられている被災度ランクを呼び出して前記表示部に表示する制御部と、
前記ケースに取り付けられて、被災度ランクに対応付けられた建物の被災内容が記載された被災度判定表を備えていることを特徴とするオンサイト警報のネットワークシステム。
今日のみどころ
気象庁の地震計がまばらにしか設置されていないので、自前の地震計を建物に配置して、地震の発生などを居住者に通知するというアイデアです。
住宅の基礎に地震計を配置するなど、住宅メーカならではの着眼点があって面白いと思います。
請求項1が結構長いことが特許を取りやすい方向に働いた可能性があります。もうちょっとコンパクトに表現することもできたのではないかという感想があります。