【特許紹介】携帯電話の電波が届かない所の作業者のバイタルデータをクラウドへ転送する特許発明(横河電機)を紹介

 今回は、体温や心拍数などのバイタルデータの転送に関する発明を紹介します。今日も一緒に勉強しましょう。

 従来、携帯電話の電波が届かない所にいる作業員のバイタルデータを収集したいニーズがあります。

 この発明では、携帯電話の基地局との無線通信ができないときはLPWA通信でバイタルデータを転送します。これにより、中継器が携帯電話の電波が届かないところにいる作業員のバイタルデータをクラウドサーバへ転送できます。



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携帯電話の電波が届かない所にいる作業員のバイタルデータを収集したいニーズ

 従来、作業員の体温や心拍数などのバイタルデータをクラウドで管理することが行われています。バイタルデータは、センサによって取得され、携帯電話網などを利用した無線通信によってクラウドサーバへ転送されます。

 しかし、作業員が作業する場所はさまざまであり、携帯電話の基地局から遠く、携帯電話を使えない場所もあります。その場合、携帯電話の電波を使って作業員のバイタルデータを収集することはできません。中継器によって電波を中継する方法や、衛星通信を利用する方法もありますが、コストがかかります。

 このように、携帯電話の電波が届かない所にいる作業員のバイタルデータを収集したいニーズがあります。

携帯電話の基地局との無線通信ができないときはLPWA通信でバイタルデータを転送

 この発明のバイタルデータ収集システムでは、センサによって取得した体温や心拍数のバイタルデータを低消費電力長距離(LPWA)無線通信によって収集します。

 センサによって取得した作業員の体温や心拍数のバイタルデータは、まず、中継器に渡されます。

 中継器は、渡されたバイタルデータを、携帯電話の基地局との無線通信が可能であるときは基地局を介して携帯電話ネットワークでクラウドサーバへ転送します。

 また、中継器は、携帯電話の基地局との無線通信が可能でない場合には、低消費電力長距離通信のネットワークを介してバイタルデータをクラウドサーバへ転送します。

 このようにして、中継器は、携帯電話の電波が届かないところにいる作業員のバイタルデータをクラウドサーバへ転送できます。

 特許第6680283号 横河電機株式会社
 出願日:2017年9月29日 登録日:2020年3月24日

【課題】
特殊環境においても、コストを抑えつつ市販の端末を活用してデータの伝送を行う。
【請求項1】
 携帯電話基地局からの電波が届かない又は届きにくい環境下で行動する行動者のバイタルデータを収集するバイタルデータ収集システムであって、
 前記行動者に携帯され、前記行動者のバイタルデータを計測するセンサーと、
 前記行動者に携帯され、前記センサーで計測された前記行動者のバイタルデータを取得し、取得した前記バイタルデータを低消費電力長距離無線通信によって送信する中継器と、
 前記中継器から送信された前記バイタルデータを、ネットワークを介して収集する収集サーバと、
 を備え、
 前記中継器は、前記行動者に携帯される第1中継器及び第2中継器を備えており、
 前記第1中継器は、前記センサーで計測された前記バイタルデータを取得し、取得した前記バイタルデータを、前記携帯電話基地局との間の無線通信が可能である場合には前記携帯電話基地局を介して前記収集サーバへ送信し、前記携帯電話基地局との間の無線通信が可能でない場合には前記第2中継器へ送信し、
 前記第2中継器は、前記第1中継器から送信されてきた前記バイタルデータを、前記低消費電力長距離無線通信を介して前記収集サーバへ送信する、
 バイタルデータ収集システム。

今日のみどころ

 携帯電話の電波が届かない場所でバイタルデータをサーバへ転送するために、低消費電力長距離通信(LPWA)を用います。とてもシンプル。

 「低消費電力長距離通信(LPWA)」という用語が出始めたころだったら、この用語を入れるだけで新規性がでるのかもしれない。そして、携帯電話の基地局とのからみを少し入れて進歩性もでるのかなと思います。

 シンプルイズベスト。