一時的な転送量の低下があってもアイソクロナス転送を維持する発明 サイレックス

 USB等のデータ通信で使われるアイソクロナス転送が、一時的なデータ転送量の低下により終了されてしまう問題を解決する発明です。

 この発明のデバイスサーバは、データ転送量の原因が回復可能なエラーと判定される場合にはアイソクロナス転送を終了させないための信号を生成して送信します。これにより、アイソクロナス転送を維持します。

 特許第6090751号 サイレックス・テクノロジー株式会社
 出願日:2013年9月27日 登録日:2017年2月17日



 ※特許の本の紹介。
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一時的なデータ転送量の低下によりアイソクロナス転送が終了される問題

  PCに直接にUSB機器を接続する代わりに、ネットワークを介してUSB機器を利用できるようにするデバイスサーバ(機器サーバ)があります。

 また、USBのデータ転送方式には複数の種類が規定されており、その1つにアイソクロナス転送という転送方式があります。アイソクロナス転送とは、一定の帯域のデータ転送を保証することができる方式です。

 USB機器がPCなどに直接に接続される場合、PCとの間のデータ転送に他の装置の通信の影響を受けることはありません。しかし、デバイスサーバを介してPCに接続される場合、USBのデータ転送がネットワークを介して行われることになるので、通信経路の断絶、他の通信との衝突の影響を受けることになります。

 従来のデバイスサーバは、アイソクロナス転送で保証すべき最低限のデータ転送量が守れなくなると通信エラーとしてアイソクロナス転送を終了します。このアイソクロナス転送の終了は、要因によらずに一律に行われるので、たとえデータ転送量の低下が一時的なものであってもアイソクロナス転送が終了されてしまうという問題があります。

回復可能なエラーの場合にはアイソクロナス転送を維持

 この発明では、アイソクロナス転送で最低限のデータ量が保証できなくなった場合、データ量の低下の要因を分析します。そして、その要因が回復可能なエラーである場合には、デバイスサーバからUSBデバイスへのアイソクロナス転送のデータ出力要求を再送します。

 回復可能なエラーというのは、具体的には、データ転送スケジューラのバッファに空きがないことによるエラーがあります。

 これにより、一時的なエラーによるデータ転送量の低下の場合に、アイソクロナス転送が終了されるのを抑制し、アイソクロナス転送を継続することができます。

【課題】
デバイスがローカル接続されたデバイスサーバにおけるアイソクロナス出力転送において、ネットワークの遅延によるデータ転送量の起伏に伴う転送エラーを回復でき、またアイソクロナス転送で保証すべきデータ転送量を維持でき、アイソクロナス出力転送のネットワーク耐性を向上するデバイスサーバおよびデバイスサーバ制御方法を提供することを目的とする。
【請求項1】
 クライアントとネットワークを介して接続され、アイソクロナス転送を行うデバイスがローカル接続されたデバイスサーバであって、
 クライアントからアイソクロナス出力転送要求を受信すると要求された転送データをバッファリングするデータバッファ部を備え、
 ローカル接続されたデバイスに対してアイソクロナス出力転送を行う際、アイソクロナス出力転送結果が正常完了または回復不能なエラーの何れでもない場合に、前記データバッファ部にバッファリングされた転送データを前記デバイスに対して再びアイソクロナス出力転送し、
 前記データバッファ部にバッファリングされた転送データを再びアイソクロナス出力転送するタイミングは、直前のアイソクロナス出力転送結果が正常完了したとき、または、クライアントから次のアイソクロナス出力転送要求を受信したとき、であることを特徴とするデバイスサーバ。

今日のみどころ

 アイソクロナス転送という言葉はあまり聞きなれないかもしれませんが、USBの他、IEEE1394などでも規定されている通信方式で、映像や音声の転送に適した通信方式です。

 デバイスサーバによりUSB通信を帯域保証のないネットワーク上にのせると、アイソクロナス転送のデータ転送量を保証できなくなる、という問題を解決すべく、データ転送量の低下が一時的であると判断できるときには、自動的に信号を生成して復旧させるという考え方です。

 帯域保証があるサービスを、帯域保証がないネットワークで実現するには工夫が必要です。このように相反する特徴をもつものを一緒に使うときに発明がうまれやすいですよね。