適切な通信経路で端末からデバイスサーバに接続するシステムの発明 サイレックス・テクノロジー

 PCからデバイスサーバまでの通信経路が長くなってしまう問題を解決する発明です。

 この発明のデバイスサーバは、PCがこのデバイスサーバへの接続に使用する接続情報(Wi-Fiアクセスポイント)をPCに提供します。PCがこの接続情報を利用して接続することで、通信経路が長くなってしまうことを回避します。

 特許第6090753号 サイレックス・テクノロジー株式会社
 出願日:2013年12月18日 登録日:2017年2月17日



 ※特許の本の紹介。
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PCからデバイスサーバまでの通信経路が長くなってしまう問題

 PCに直接にUSB機器を接続する代わりに、ネットワークを介してUSB機器を利用できるようにするデバイスサーバ(機器サーバ)という製品があります。

 例えば、USB接続の外付けハードディスクをPCに直接に接続するのではなく、デバイスサーバに外付けハードディスクを接続し、PCとデバイスサーバとがネットワークを介して接続されます。PCは、ネットワークとデバイスサーバを介して外付けハードディスクにアクセスします。

 従来、PCからデバイスサーバまでの通信経路は、デバイスサーバに接続される機器とは無関係に選択されます。そのため、PCからデバイスサーバまでの通信経路が長くなってしまうことがあるという問題があります。

デバイスサーバが接続情報をPCに提供

 この発明では、PCがWi-Fi(無線LAN)を利用してデバイスサーバに接続する場合に、接続に利用する通信経路をデバイスサーバからPCに送信します。通信経路は、具体的にはWi-Fiのアクセスポイントのことで、接続情報は、例えばSSIDとBSSIDです。

 PCは、この接続情報を参照して、適切なアクセスポイントを経由してデバイスサーバに接続します。

 これにより、デバイスサーバが指定するアクセスポイントを使用して、PCがデバイスサーバに接続することができます。これにより、PCからデバイスサーバまでの通信経路が長くなってしまうことが回避されます。

【課題】
通信端末と機器サーバとの間でより適切な通信経路を選択する通信システム等を提供する。
【請求項1】
 所定の接続規格で機器に接続される機器サーバと、前記機器サーバを介して前記機器と通信する通信端末を備える通信システムであって、
 前記通信端末は、任意の無線基地局である第一基地局、又は、前記機器サーバに接続された無線基地局であってネットワークを介して前記第一基地局に接続された無線基地局である第二基地局との無線通信を通じて前記機器サーバと通信可能であり、
 前記機器サーバは、
 前記機器を示す情報と、前記第二基地局を示す情報とを対応付けて示す機器接続情報を生成する生成部と、
 前記生成部が生成した前記機器接続情報を、前記第一基地局と前記通信端末との間で確立された第一通信リンクを通じて前記通信端末に送信する送信部と、
 前記通信端末と前記機器との間の通信を中継する中継部とを備え、
 前記通信端末は、
 前記第一基地局との間で前記第一通信リンクを確立する確立部と、
 前記送信部が送信した前記機器接続情報を、前記第一通信リンクを通じて受信する受信部と、
 前記機器との間の通信を行う機器通信部とを備え、
 前記確立部は、さらに、
 前記通信端末が前記機器と通信する場合に、確立した前記第一通信リンクを切断し、かつ、前記受信部が受信した前記機器接続情報において前記機器に対応付けられた前記第二基地局との間で第二通信リンクを確立し、
 前記機器通信部は、
 前記中継部により中継されることで、前記第二通信リンクを通じた前記機器との間の通信を行う
 通信システム。

今日のみどころ

 PCが機器サーバに接続する通信経路を指定するために、適切な通信経路を示す情報をPCに提供しておくという、とてもシンプルな構成で特許がとれていることがわかります。

 先行技術があまりないせいなのかもしれませんが、余計な限定がない、上手な権利化ができていると思います。発明のポイントがうまく抽出されている結果だと思います。すばらしい。