【特許紹介】QRコードの特許発明(デンソー)を紹介/どんな角度で読み取っても精度よく情報を読み取れる二次元コード

 今回は、QRコード(二次元バーコード)に関する基本的な発明(1999年登録)を紹介します。今日も一緒に勉強しましょう。

 従来、二次元コードの読み取りに高度な処理や長い時間が必要であるという問題があります。

 この発明では、マトリクスの少なくとも2つの位置に位置決め用の図形を配置します。これにより、どのような角度で読み取っても、精度よく情報を読み取っていくことができます。



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二次元コードの読み取りに高度な処理や長い時間が必要であるという問題

 従来、二次元コードから情報を読み取るには、高性能なCPUによる処理が必要でした。

 二次元コード自体に高速な読み取りができるような工夫がなされておらず、また、回転しても読み取られるような工夫もされていませんでした。そのため、例えばコード全体を読み取った後で高性能なCPUによる処理を行うことが必要でした。

 このように、従来の二次元コードは、情報の読み取りに高度な処理や長い時間が必要であるという問題がありました。また、少し汚れると読み取りができなくなるという欠点もありました。

マトリクスの少なくとも2つの位置に位置決め用の図形を配置

 この発明の二次元コード(つまりQRコード)は、二進コード(白または黒のコード)がマトリクス状に配置されたものです。

 そして、マトリクスの2カ所以上の位置に、位置決め用の図形が配置されています。この図形は、どんな角度で横切る線で読み取っても、同じ周波数成分比が得られるような図形です。

 二次元コードに含まれる情報は、位置決め用の図形以外の場所に配置されます。

位置決め用の図形の例


 図1(右図)に位置決め用の図形の例が示されています。

 この例では、1つの二次元コードのなかに位置決め用の図形が3カ所に配置されています。そして、3つの図形は、それぞれ、黒い正方形の中に、縮小した白い正方形があり、その白い正方形の中に黒い正方形がある図形になっています。

 この場合、どんな角度の線で読み取っても、周波数成分比は、暗:明:暗:明:暗=1:1:3:1:1になっています。

 マトリクスにこのような特徴があるので、どのような角度で読み取っても位置決め用の図形の位置を簡単に見つけることができ、それに基づいてシンボル間の距離や角度を使って、精度よく情報を読み取っていくことができます。

 あと、正方形以外の例として、丸や六角形でもできます。特許の権利範囲が正方形だけに限られておらず、広い権利範囲をカバーできています。

 特許第2938338号 株式会社デンソー
 出願日:1994年3月14日 登録日:1999年6月11日

【課題】
全方向で高速読み取りができ、さらに読み取り精度が高くデータ比率(コード内に占めるデータ領域の比率)の高い二次元コードを提供する。
【請求項1】
 二進コードで表されるデータをセル化して、二次元のマトリックス上にパターンとして配置した二次元コードにおいて、
前記マトリックス内の、少なくとも2個所の所定位置に、各々中心をあらゆる角度で横切る走査線において同じ周波数成分比が得られるパターンの位置決め用シンボルを配置したことを特徴とする二次元コード。

今日のみどころ

 1999年に登録されていた、QRコードの基本的な特許を紹介しました。デンソーが二次元コードの使用に制限を設けなかったこともあり広く使われるようになりました。

 携帯電話やスマホで手軽に読み取れることもあって、おそらく当初考えられていなかった用途にもどんどん使われるようになったと思います。最近では、LINEの連絡先の交換や、スマホのQRコード決済に使われるようになった事例もあります。

 もしQRコードに使用料をとっていたらすごい利益が得られたのに、という考えもあるようですが、もし使用料をとっていたら、少し違う別なコードが広く使われるようになっていたかもしれません。そういう面では特許の運用はけっこう難しいです。

 でも長く使われる技術ってすごいなと思います。こういう技術を開発できるようになりたいですよね。

 なお、請求項1がとてもすっきり書かれており、無駄な限定もないと思います。広い範囲をカバーする上手な権利化ができていると思います。