【特許紹介】蓄電素子の測定データから原因を絞り込んで修理手順を表示する(GSユアサ)を紹介

 今回は、蓄電素子の修理に関する特許を紹介します。今日も一緒に勉強しましょう。

 従来、蓄電池の故障対応作業の作業者の熟練度によって、作業に要する時間が異なるという問題があります。

 本発明では、蓄電素子の測定データから原因を絞り込んで修理手順を表示します。これにより、作業者の熟練度によらずに均質な修理作業をすることができます。



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

蓄電池の故障対応作業の作業者の熟練度によって作業に要する時間が異なる

 リチウムイオン電池などの蓄電素子が利用されています。蓄電素子は、例えば、UPS(無停電電源装置)や安定化電源などの電源装置利用されています。

 蓄電素子の状態を遠隔から確認する技術もあります。この場合、遠隔地にある蓄電素子が故障した場合には、蓄電素子の設置場所に保守作業者が行って、故障に対する対処をします。

 この場合、作業者の熟練度によって作業に要する時間に差異が生ずるという問題があります。

蓄電素子の測定データから原因を絞り込んで修理手順を表示


 この発明の方法(保守支援方法)は、作業者の熟練度によらずに均質な修理作業がなされるようにします。

 まず、蓄電素子の電圧値を含む測定データを記憶している記憶装置から、その測定データを取得して、蓄電素子の異常、または、異常の予兆の原因を絞り込みます。

 例えば、測定データに含まれる電圧値が正常範囲の上限を突破しているかどうか、下限を突破しているかどうか、などから、蓄電素子の異常、または、異常の予兆の原因を絞り込みます。

 そして、原因ごとに対応付けて記憶している修理フローのうちから、絞り込んだ原因に対応する修理フローを選択して、修理手順を出力します。

 作業者は、出力された修理手順に従って蓄電素子の修理をすることができるので、作業者の熟練度によらずに均質な修理作業をすることができます。

 特許第6908070号 株式会社GS湯浅
 出願日:2019年6月20日 登録日:2021年7月5日

【課題】
蓄電素子を含むシステムを、継続して運用できるような保守管理が望まれる。
【請求項1】
 コンピュータが、
 蓄電素子に関する電圧値を含む測定データを定期的に取得し逐次記憶する記憶装置から取得される測定データに基づき、前記蓄電素子の異常又は異常の予兆の原因を、複数の原因候補から1 又は複数に絞り込み、
 前記複数の原因候補夫々に対応付けて記憶してある修理フローから、絞り込まれた原因に対応する修理フローを選択し、
 選択した修理フローに基づいて実行すべき修理手順を出力する
 保守支援方法。

今日のみどころ

 蓄電素子の故障の原因に応じた修理手順を表示する発明です。

 請求項1の記載は、余計な限定がなく、広い権利範囲をカバーできていると思います。「蓄電素子」と明確に記載することで、ほかの素子や装置の保守方法とは異なると認められたためかもしれません。

 請求項に記載する言葉によって特許の権利範囲が決まってしまうので、請求項に入れる言葉は慎重に選ばれます。いっぽう、無駄に広い権利範囲を狙ったために、うまく権利化することができなかったというケースもでてきます。

 請求項に入れる言葉をどうするか、上手に検討して上手に権利化しましょう。