【特許紹介】AI学習済モデルを用いてトイレ使用者の異常の有無を推定する特許発明(凸版印刷)を紹介

 今回は、見守り装置に関する特許を紹介します。今日も一緒に勉強しましょう。

 従来、トイレ空間ごとにセンサの数や種類を決定するのに手間がかかる問題があります。

 本発明では、学習済モデルにセンサ情報を入力することでトイレ使用者の異常の有無を推定します。これにより、さまざまなタイプの個室において、トイレ使用者の見守りを行うことができます。



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トイレ空間ごとにセンサの数や種類を決定するのに手間がかかる問題

 トイレや風呂などのプライベートな空間において使用者の見守りを行うシステムがあります。

 トイレなどの空間は、広さや設備などについてさまざまなタイプがあります。

 そのため、トイレなどの空間に取り付けたセンサなどによって使用者の見守りをしようとする場合、その空間ごとにセンサの数や種類を決定する必要があり、手間がかかるという問題があります。

学習済モデルにセンサ情報を入力することでトイレ使用者の異常の有無を推定

 この発明の装置(見守り装置)は、さまざまなタイプの個室において、トイレ使用者の見守りを行うことができます。

 具体的には、トイレ空間に設けられたセンサにより取得されたセンサ情報を取得し、取得したセンサ情報と学習済モデルを用いて、対象者の異常を推定します。

 学習済モデルは、センサ情報が入力された場合に出力する情報が、使用者に異常があるか否かを示す情報に近づくように機械学習によって生成されたモデルです。

 また、センサ情報は、ドアの開閉センサ、照度センサ、便座の着座センサで感知されたセンサ情報です。

 このような学習済モデルに、使用者から得られたセンサ情報を入力することで、使用者に異常があるか否かを示す情報が出力され、出力される情報を、使用者の異常の有無の推定結果として出力します。

 このようにすることで、トイレなどの空間ごとにセンサ情報のパターンを個別に作成することなく使用者の異常の有無を検知することができ、言い換えれば、上記パターンを個別に作成する手間を省くことができます。

 特許第6822587号 凸版印刷株式会社
 出願日:2020年3月16日 登録日:2021年1月12日

【課題】
様々なタイプの個室がある場合であっても、個別に条件を設定することなく、トイレ使用者の見守りを行うことができる見守り装置を提供する。
【請求項1】
 トイレ空間に設けられたセンサにより検知されたセンサ情報を取得するセンサ情報取得部と、
 前記センサ情報と、学習済モデルとを用いて、前記トイレ空間にいる見守り対象者における異常の度合いを推定する異常推定部と、
 を備え、
 前記学習済モデルは、学習用のトイレ空間に設けられたセンサにより検知された学習用センサ情報を入力させることにより得られる出力が、前記学習用のトイレ空間にいる使用者における異常の有無に近づくように学習されたモデルであって、入力された前記センサ情報から、前記センサ情報に対応する空間にいる前記見守り対象者における異常の度合いを推定するモデルであり、
 前記センサ情報取得部は、前記トイレ空間におけるドアの開閉を検知する開閉センサ、前記トイレ空間に設けられた照明における点灯の有無を検知する照度センサ、及び前記トイレ空間に設けられた便座への着座を検知する着座センサのそれぞれを前記トイレ空間に設けられたセンサとし、前記センサのそれぞれにより検知された情報が検知時間に対応づけられた情報を、前記センサ情報として取得し、
 前記学習用センサ情報は、前記開閉センサ、前記照度センサ、及び前記着座センサのそれぞれにより検知された情報が検知時間に対応づけられた情報である、
 ことを特徴とする見守り装置。

今日のみどころ

 機械学習(いわゆるAI)によって、センサ情報からトイレ使用者の異常の有無を推定する発明です。

 機械学習の発明では、学習済モデルの内部構成を規定するのではなく、学習済モデルをどのような学習によって構築したかを規定することで、学習済モデルの構成が明確になります。

 このような学習済モデルの請求項の書き方もだいたい形がきまっているので、慣れてしまうとよいと思います。学習済モデルの発明の書き方の参考にもなる、良い特許だと思います。