【特許紹介】複数の通信装置とのリンクを維持しながら、2台の通信装置間で効率よく通信できる特許発明(楽天)を紹介

 今回は、近距離無線通信(Bluetooth, NFC)に関する発明を紹介します。今日も一緒に勉強しましょう。

 従来、近距離無線通信で特定の2台の通信を効率よくできない問題があります。

 この発明の通信装置は、複数の通信装置とのリンクを維持しながら、特定の通信装置以外の通信装置との通信を制限します。これにより、近距離無線通信で特定の2台の通信を効率よくできるようにします。



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近距離無線通信で特定の2台の通信を効率よくできない問題

 Bluetoothなどの通信(近距離無線通信)では、複数の通信装置間で通信をすることができます。

 しかし、複数の通信装置間で通信リンクを確立している状態で、特定の2台の通信装置間で近距離無線通信をすることが必要である場合があります。例えば、その2台で迅速な処理をする必要がある場合などがあります。

 このような場合に、その特定の2台の通信装置間の通信を効率よく行うことができないという問題があります。

複数の通信装置とのリンクを維持しながら、特定の通信装置以外の通信装置との通信を制限


 この発明の通信装置は、複数の通信装置間で近距離無線通信のリンクを確立しながら、特定の通信相手との通信を効率よく行うことができます。

 具体的には、2種の近距離無線通信(例えばBluetoothとNFC)が用いられる構成での通信装置に関する発明です。図1の構成だと、通信装置CSnに該当すると考えられます。

 通信装置CSnは、第1通信(bluetooth)で複数の通信装置CMnと通信リンクを確立しています。

 通信装置CMnは、第1通信より通信範囲が狭い第2通信(NFC)の通信範囲内に、記録媒体を検出した場合に、検出情報を通信装置CSnに送信します。

 通信装置CSnは、検出情報を受信すると、通信装置CMnとの間で確立している通信リンクを維持しながら、その検出情報を送信した通信装置CMn以外の通信装置CMとのデータの送受信を制限します。

 実際の使用例としては、図10のように、飲食店のテーブルに決済端末Tが配置されていて、店員が所持しているIDをNFCで決済端末に読み取らせるように使用するようです。

 このようにすることで、通信装置は、複数の通信装置間で近距離無線通信のリンクを確立しながら、特定の通信相手との通信を効率よく行うことができます。

 特許第6667056号 楽天株式会社
 出願日:2017年8月30日 登録日:2020年2月2日

【課題】
特定の通信装置と複数の通信装置( 通信相手) のそれぞれとの間のリンクの確立を維持しつつ、任意の時間帯で近距離無線通信を行わない他の通信装置との間の当該近距離無線通信によるデータの送受信を効率良く制限する。
【請求項1】
 第1通信可能範囲内に存在する複数の通信相手との間で第1近距離無線通信に必要なリンクを確立した後、当該リンクが確立された複数の通信相手との間で前記第1近距離無線通信を行う通信装置であって、
 前記通信相手は、前記第1通信可能範囲よりも狭い第2通信可能範囲内に入った携帯型記憶媒体を検出した場合に、前記第2通信可能範囲内に携帯型記憶媒体が入ったことを示す検出情報を、前記リンクが確立された通信装置へ前記第1近距離無線通信により送信するものであり、
 前記リンクが確立された複数の通信相手のうちの何れか1つの通信相手から送信された前記検出情報が受信された場合、前記リンクが確立された複数の通信相手のそれぞれとの間の当該リンクの確立を維持しつつ、前記検出情報を送信した通信相手以外の通信相手との間の前記第1近距離無線通信によるデータの送受信を制限する通信制御部を備えることを特徴とする通信装置。

今日のみどころ

 近距離無線通信で、特定の端末の通信を制限しながら、他の端末の通信を効率よく行う発明です。

 複数の規格の無線通信が同じエリアで使われるようになると、便利になる一方、処理の迅速化、情報流出の防止などのために、特定の端末の通信だけを許容したい場合もでてきます。そのようなときに使える発明です。

 請求項1の「通信相手」という言葉が、どの通信装置を意味しているのかがちょっと不明確なのではという感じもしました。が、審査で問題なかったようなので、明確なのだと思います。