クレジットカード等の仮想カードをモバイル機器間で安全に転送する特許発明(マスターカード)を紹介

図2

 今回は、クレジットカードの仮想カードに関する特許を紹介します。

 従来、クレジットカードなどの仮想カードを安全に転送することが必要とされていました。

 この発明では、専用のSMSメッセージ等を利用して安全な通信によって仮想カードを送信します。これにより、クレジットカードなどの仮想カードを安全に転送することができます。



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クレジットカードなどの仮想カードを安全に転送することが必要

 スマホなどのモバイル機器でアプリを実行することによってクレジットカードと同じはたらきをする機能があります。クレジットカードのほか、デビットカード、プリペイドカード、各種ポイントカードなども同様です。このような機能で実現されるカードを仮想カードとよんでいます。

 その場合、モバイル機器から別のモバイル機器に仮想カードを転送することが想定されます。例えば、誕生日プレゼントとして20ドルを渡すために、20ドルのプリペイドカードの仮想カードを他の人に転送するという使い方が想定されます。

 そこで、仮想カードを安全に転送することが必要になります。

専用のSMSメッセージ等を利用して安全な通信によって仮想カードを送信

図4

 この発明では、モバイル機器間で仮想カードを転送し、受信側のモバイル機器によってPOS端末に使用する(つまり、支払に使用する)ことができます。

 送信側のモバイル機器間から受信側のモバイル機器への仮想カードの転送には、専用のサーバ(OTAプロビジョニングサーバ)が用いられます。このサーバが、送信側機器から仮想カードを受信して、その仮想カードを安全に受信側機器へ送信して設定します。

 ここで、サーバは、受信側機器から専用のSMSメッセージを受信したことをきっかけとして、受信側機器との間で安全な通信チャネルを設定して通信をします。ここがこの発明のポイントです。

 特許第6195637号 マスターカード インターナショナル インコーポレーテッド
 出願日:2016年2月22日(優先日2008年10月6日、分割の原出願日2009年10月6日)登録日:2017年8月25日

【課題】
NFCが有効なモバイル機器間の仮想カード転送のためのシステム、方法、及びコンピュータ製品への要求がある。
【請求項1】
近距離通信(NFC)が有効なモバイル機器の間で無線(OTA)仮想カードを転送するための方法であって、前記方法は以下を含む:
 関連するハードウェアを有する少なくとも1つのコンピュータを含むOTAプロビジョニングサーバにて:
 送信モバイル機器から、受信モバイル機器に向けられたクレジットカード、デビットカード、プリペイドカード、ロイヤリティカード、ポイントカード(rewards card)、又はクーポンのいずれかを表す仮想カードを受信し;及び
 前記OTAプロビジョニングサーバにより、OTAインターフェースを介して前記受信モバイル機器内のセキュアエレメントへ前記仮想カードを設定し、ここで、前記仮想カードの設定は、前記OTAプロビジョニングサーバから前記受信モバイル機器へ前記仮想カードのダウンロードを開始するための前記受信モバイル機器内の財布アプリケーションをトリガーする、コントロールSMSメッセージを送信することと、安全な通信チャンネルの要求を前記財布アプリケーションから受信することと、前記受信モバイル機器と前記安全な通信チャンネルを生成して前記仮想カードを前記財布アプリケーションに設定することと、を含み、
 前記仮想カードは、購入取引を実行するために前記受信モバイル機器によってPOS端末で直ちに表示可能である。

今日のみどころ

 現実のクレジットカードなどの代わりに、クレジットカードなどの仮想カードを安全に他人に渡す機能に関する発明です。スマホのアプリでクレジットカードや各種会員カードと同じはたらきを実現する仮想カードの機能は、携帯電話網やWifiを利用した通信機能、いつもつながっているネットワークを実現する技術、暗号化や認証機能などの多数の技術の集まりによって支えられています。

 それをもう一歩進めて、仮想カードを他人に渡す機能を実現するのが本発明です。どんどん自由度が高くなっていって、どんどんおもしろい技術が生まれていきますね。