【特許紹介】誤った香りの放出を無線タグで防ぐ香りディスプレイの特許発明(アロマジョイン)を紹介

 今回は、所望の香りを放出する香りディスプレイに関する発明を紹介します。今日も一緒に勉強しましょう。

 従来、香りカートリッジの入力を誤ると、誤った香りが放出されてしまうという問題があります。

 この発明では、香りカートリッジの識別情報を無線通信で読み取ることで、誤った香りが放出される可能性を小さくすることができます。



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

香りカートリッジの入力を誤ると、誤った香りが放出されてしまう

 人間のコミュニケーションに、見る情報や聞く情報だけでなく、香りの情報を用いることが検討されています。視覚や聴覚だけでなく、嗅覚を利用することに相当します。

 その場合に使用される、香りを発生させる装置(香りディスプレイ)があります。

 従来の香りディスプレイでは、香りの発生源(香源)を封入した複数のカートリッジを準備しておき、所望のカートリッジから香りを出すように制御します。

 しかし、従来の香りディスプレイは、複数のカートリッジそれぞれを収容する位置をユーザが入力する必要があり、入力を誤ると、意図された香りと異なる誤った香りが放出されてしまうという問題がありました。

香りカートリッジの識別情報を無線通信で読み取る


 この発明の香りディスプレイは、誤った香りが放出される可能性を小さくすることができます。

 香りディスプレイには、複数のカートリッジ収容部があり、その収容部のそれぞれに、無線通信のチップ(近距離無線通信チップ)(具体例はNFCチップ)が搭載されています。収容部のそれぞれには、香りの発生源である香りカートリッジが収容されます。

 複数のカートリッジのそれぞれには、無線通信のタグ(近距離無線通信タグ)(具体例はNFCタグ)が搭載されています。

 カートリッジが香りティスプレイに収容されると、無線通信のチップによってタグから、香り(香源)を識別するデータを受信し、その香りを認識することで、香りを放出する制御をします。

 このようにすることで、ユーザが、香りやカートリッジの情報を入力することがなくなるので、ユーザが入力を誤ることに基づいて発生する問題を抑制することができます。

 特許第6649457号 株式会社アロマジョイン
 出願日:2018年11月12日 登録日:2020年1月20日

【課題】
香りカートリッジの制御を確実にし、誤った香りが放出される危険性を小さくできる香りカートリッジ及び香りディスプレイを提供する。
【請求項1】
 内部に香源を収容する中空部を有する、上面、底面及び側面を持つ三角柱の形状を持つ香りカートリッジが複数個収容されるカートリッジ収容部を持ち、各香りカートリッジから香気を外部に放出する香りディスプレイであって、各前記香りカートリッジは内部の香源を識別するデータを近距離無線通信により外部に送信可能な近距離無線タグを前記底面に備え、
 前記香りディスプレイは、
 前記カートリッジ収容部を持つ筐体を含み、
 前記筐体は、前記香りカートリッジからそれぞれ放出された香気を外部に放出する開口が設けられた先端部と、底部とを持ち、
 前記カートリッジ収容部は、各前記香りカートリッジの前記底面が同一平面上に配置されるように、かつ前記香りカートリッジの前記底面の外周が全体としてほぼ多角形を形成するように各前記香りカートリッジを保持し、
 前記香りディスプレイはさらに、前記カートリッジ収容部に収容された各前記香りカートリッジの、前記多角形を形成する部分の近傍に配置された、互いに区別可能な複数個の近距離無線通信チップを搭載するチップステージを含み、
 前記複数個の近距離無線通信チップの各々は、当該近距離無線通信チップに近接する部分に前記香りカートリッジが収容されると、当該香りカートリッジの前記近距離無線通信タグとの近距離無線通信により当該香りカートリッジに収容された香源を識別するデータ
を受信し、当該香源を識別するデータ及び当該近距離無線通信チップを識別するデータを出力し、
 前記香りディスプレイはさらに、各前記近距離無線通信チップから香源を識別する前記データ及び近距離無線通信チップを識別する前記データとを受け、それらデータに基づいて、所望の香源を持つ香りカートリッジを駆動して香気を放出させる制御回路を含む、香りディスプレイ。

今日のみどころ

 香りディスプレイ(香りを放つ装置)についての発明で、ユーザが入力を間違えたときに起きる不都合を解消することができるものです。発明のポイントは、単純で、香りカートリッジの種別を無線タグから無線通信で読み取ることです。

 権利範囲を広げる意味では、香りカートリッジの形状などの記載は、請求項に記載しない方がよさそうです。特許技術者にとっては、このような記載がない請求項の書き方を検討してみると、よいトレーニングになると思います。

 香りディスプレイのアイデアはずいぶん前からありましたが、実用化が進んで製品が出てきています。面白いアプリケーションと組み合わせられると、もっともっとおもしろいアイデアがでてきそうな分野だと思います。

 本件は、アロマジョインのアロマシューターという製品に関連する技術だと考えられます。ご参考に。