ブロックチェーンのサイドチェーンからメインチェーンへの資産の移動を制限して安全性を確保する特許発明(bitFlyer)を紹介

図2

 今回は、ブロックチェーンでの資産の移動に関する発明を紹介します。

 従来、ブロックチェーンのスケーラビリティの問題、サイドチェーンを利用する場合の資産移動の安全性の問題がありました。

 この発明では、サイドチェーンからメインチェーンへ移動する資産が、受け取った量を超えるとその資産の移動を禁止します。これにより、資産移動の安全性を確保します。



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

ブロックチェーンのスケーラビリティの問題、メインチェーン・サイドチェーン間の資産移動の安全性の問題

 従来、ビットコインなどの仮想通貨などの取引の履歴や、その他の情報の記録のためにブロックチェーンが活用されています。ブロックチェーンは、P2Pネットワークを利用した分散台帳で、ゼロダウンタイム、改ざんの困難性、低コストというメリットがあります。

 ブロックチェーンでは、P2Pネットワークの各ノードがすべてのトランザクションデータのコピーを保有しています。そのため、スケーラビリティ、処理速度に限界があることが知られています。

 スケーラビリティを高めるために、メインチェーンと分離したサイドチェーン(側鎖)技術によってトランザクションの管理単位を細分化することも行われています。サイドチェーンでスマートコントラクトを動作させることもできます。

 しかし、メインチェーンとサイドチェーンとの間で資産を移動する際に安全性の問題があります。

ブロックチェーンのサイドチェーンからメインチェーンへ移動する資産が、受け取った量を超えると移動禁止

図2

 この発明は、ブロックチェーンのメインチェーンとサイドチェーンとの間での資産の移動を安全にすることができます。

 メインチェーンからサイドチェーンへの資産の移動は、制限なく行います。このとき、その移動量の分の資産をメインチェーンで使えない状態(ロック状態)にし、サイドチェーンで新たに使えるようにします。

 サイドチェーンからメインチェーンへの資産の移動は、それまでにメインチェーンからサイドチェーンに移動された資産の量を超えない範囲で可能とし、超える場合には不適切なトランザクションとして資産の移動を禁止します。

 これにより、スケーラビリティなどの問題をサイドチェーンによって解決しつつ、メインチェーン-サイドチェーン間での資産移動の安全性の問題も解決できます。

 特許第6370016号 株式会社bitFlyer
 出願日:2017年3月31日 登録日:2018年7月20日

【課題】
ネットワーク間における資産移動の安全性を確保する。
【請求項1】
 上位ネットワーク及び前記上位ネットワークの下位に位置する1又は複数の下位ネットワークを有するネットワークにおいて前記1又は複数の下位ネットワークのいずれかを構成するノードにおける処理方法であって、
 前記ノードが、前記ノードが含まれる下位ネットワークと自己以外のネットワークとの間の取引履歴を記録するデータベースを有し、
 前記ノードが、前記ノードが含まれる下位ネットワークから前記上位ネットワークへの資産の移動を生じさせるトランザクションを含む複数のトランザクションを受信して、トランザクションを複数まとめることによってブロックを生成するステップと、
 前記ノードが、前記ノードが含まれる下位ネットワークを構成するノードのうちの所定の数により前記ブロックの承認が得られたことを条件に前記ブロックを確定させて、前記取引履歴に前記ブロックを追加するステップと
を含み、
 前記ノードは、前記取引履歴に基づいて、上位ネットワークに引き渡す資産の総量及び上位ネットワークより受け取った資産の総量を計算し、上位ネットワークに引き渡す資産の総量が上位ネットワークより受け取った資産の総量を超える場合には不適切なトランザクションとして前記ブロックを生成しないことを特徴とする処理方法。

今日のみどころ

 ブロックチェーンのメインチェーンとサイドチェーンを連携させるときの工夫に関する発明です。

 ブロックチェーンのように新しい分野が有名になると、置いて行かれないように勉強してキャッチアップしていかないといけませんね。こつこつがんばりましょう。