ヘッドライトの配光と偏光を制御して視認性向上と眩しさ防止する特許発明 小糸製作所

図1

 従来、自動車などの前方の視認性を向上させながら、眩惑(眩しさ)を防止するという課題がありました。

 この発明では、対向車のヘッドライトの偏光軸の方向に基づいて自車のヘッドライトの配光及び偏光を制御することで、視認性向上と眩しさを防止します。

 特許第5844074号 株式会社小糸製作所
 出願日:2011年6月16日 登録日:2015年11月27日



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

前方の視認性向上させながら、眩惑を防止する課題

 自動車などのヘッドライト(前照灯)を制御するための前照灯制御装置に関する発明です。

 従来、自動車の前方の視認性を高めるとともに、対向車への眩惑(眩しさ)を防止する技術があります。例えば、ヘッドライトが出射する光の偏光方向と周波数帯域を制限する技術があります。これにより、対向車も同じ技術を搭載している場合には、自車のヘッドライトが出射した光の反射光だけを自車が視認することができます(特許文献1)。

 しかし、対向車が同じ技術を搭載していない場合には機能しないという問題がありました。つまり、対向車が同じ技術を搭載していない場合には、自車のヘッドライトの光により、対向車を眩惑させるおそれがあるという問題がありました。

対向車の偏光方向に基づいて自車のヘッドライトの配光及び偏光制御

図5

 この発明の前照灯制御装置は、対向車のヘッドライトの偏光軸の方向を判定するとともに、自車のヘッドライトの配光及び偏光方向を制御できます。

 まず、対向車のヘッドライトが出射する光の偏光軸の方向を取得します。そして、対向車のヘッドライトが出射する光が偏光でない場合と、対向車のヘッドライトが出射する光の偏光軸の方向と自車のヘッドライトが出射する光の偏光軸の方向が一致する場合には、自車のヘッドライトの配光を制御します。

 具体的には、自車のヘッドライトが出射する光のうち、対向車に向かって進行する光を遮光する制御をします。

 対向車のヘッドライトの光の偏光軸の方向は、偏光方向が異なる2枚の偏光板を通過した光の強度から得ることができます。また、車車間通信(無線通信)で得るアイデアも含まれています。

 これにより、対向車のヘッドライトが偏光光でない場合、及び、対向車のヘッドライトの偏光軸の方向が自車と一致する場合でも、自動車の前方の視認性を高めるとともに、対向車への眩惑を防止することができます。

【課題】
配光制御方式が統一されていない状況においても車両における眩惑を回避し、かつ同時に車両の前方領域の視認性を向上することが可能な前照灯制御装置を提供する。
【請求項1】
 自車の前照灯を所定の配光制御方式で制御する配光制御手段と、他車における前照灯の配光制御方式を判定する配光判定手段とを備える車両の前照灯制御装置であって、前記配光制御手段は自車の前照灯の照明光を所定方向の偏向軸の偏光に制御する手段であり、前記配光判定手段は他車の前照灯の照明光が偏光であるか否かを判定し、偏光と判定したときにはその偏光軸の方向が自車の偏光軸の方向と一致するか否かを判定する手段であり、さらに前記配光制御手段は他車の照明光が偏光でないとき、および他車の偏光軸の方向が自車の偏光軸の方向と一致するときに、自車の前方領域のうち他車が存在する領域を遮光する制御を行うことを特徴とする車両の前照灯制御装置。

今日のみどころ

 自動車のヘッドライトの光を対向車に向けないようにして、運転に支障が生じないようにする発明です。配光の制御に液晶などを使うことになると構成が複雑になって、コストの増加や、故障のときの動作保証などが心配になってきます。このような心配は、製品化する場合には課題になるのですが、技術アイデアレベルではどんどん積み重ねていってほしいと思います。

 その中で技術的にもビジネス的にも現実的なアイデアが残っていくことになると思います。

 あと、自動車の符号が「CAR」になっているのがおもしろい。符号というか、そのままですよね。。