簡易な処理で二重リングネットワークの障害時に通信路を切替る特許発明 ベックオフオートメーション

図1B

 従来、二重リングネットワークで障害切替処理が複雑であるという問題がありました。

 この発明では、マスターと、障害が発生したスレーブとで通信路を短絡して障害箇所を迂回します。これにより、簡易な処理で二重リングネットワークの障害時に通信路を切り替えることができます。

 EtherCATのリングネットワークの障害時の経路切替に関する技術です。

 特許第4904399号 ベックオフ オートメーション ゲーエムベーハー
 出願日:2011年6月16日 登録日:2015年11月27日


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二重リングネットワークで障害切替処理が複雑

 工場などの設備の制御のためのネットワークには、配線が複雑化するのを回避するためにリングトポロジを有するリングネットワーク(リング型伝送路)が採用されています。リングネットワークには、全体を制御するマスターユニットが接続されており、各設備はスレーブユニットとしてリングネットワークに接続されています。マスターユニットが送信したデータは、スレーブユニットを循環してマスターユニットに戻ります。

 リングネットワークの障害に対する耐性を高めるために、リングを二重にした二重リング構造も採用されています。

 二重リング構造をとる場合、一方のリングに障害が発生すると他方のリングへの切り替えが行われますが、従来の二重リングネットワークでは、この切替処理が複雑であるという問題がありました。

マスターと、障害が発生したスレーブとで通信路を短絡して障害箇所を迂回

図1B

 この発明の通信システムでは、1つのマスターユニットと、複数のスレーブユニットとが、2つの通信路によって接続される二重リング構造をとっています。

 スレーブユニットは、2つの通信路それぞれの入力端子及び出力端子(合計4つ)をもっています。また、スレーブユニットのうち、障害が発生したスレーブユニットは、スレーブユニット内で2つの通信路を短絡させて、折り返しの経路を作ります。

 また、マスターユニットは、2つの通信路それぞれの入力端子及び出力端子(合計4つ)をもっています。マスターユニットは、リング構造に障害が発生すると、マスターユニット内で2つの通信路を短絡させて、折り返しの経路を作ります。

 このようにすることで、リングネットワークに障害が発生した場合には、障害箇所を迂回して1本の通信路を形成することができます。そしてこの処理が、マスターユニットとスレーブユニットそれぞれで通信路を短絡させるという簡易な処理によって実現し、言い換えれば、複雑な切替処理が不要であるということが利点です。

 なお、この発明の経路切替の方法は、Ethernet規格を用いたリングネットワークの規格であるEtherCATの障害切替に採用されているものだと考えられます。EtherCATは、Ethernetフレームを用いるので、1500バイトという大きなデータサイズの通信フレームを高速で送信できる利点があります。(特許的には、信号線の種別として電線、光ファイバー、または無線ケーブルなどがあり、とくに限定されていません。)

【課題】
リンク障害の発生時に、ハードウェアおよび切り替えの複雑性が最小限であるマスター/スレーブ構造のリアルタイム再構成を可能にする、マスター/スレーブ構造を有する通信システムと、そのような通信システムのためのマスターユニットと、マスター/スレーブ構造を有する通信システムの動作方法とを提供する。
【請求項1】
 マスターユニット(1)と複数の各スレーブユニット(3)とを含んだ、通信システムであって、
 上記マスターユニットおよび上記各スレーブユニットは、それぞれ、第1通信路(21)に接続された2つの各第1ターミナルと、第2通信路(22)に接続された2つの各第2ターミナルとを含んでおり、
 上記マスターユニット(1)および上記各スレーブユニット(3)の上記各第1ターミナルは、上記第1通信路(21)を介して接続されて第1のリング構造を形成しており、
 上記マスターユニット(1)および上記各スレーブユニット(3)の上記各第2ターミナルは、上記第2通信路(22)を介して接続されて第2のリング構造を形成しており、
 上記各スレーブユニット(3)のそれぞれは、上記各スレーブユニット(3)内の障害モードにあるスレーブユニット内にて、上記各第1ターミナルと上記各第2ターミナルとの間にある上記第1通信路(21)および上記第2通信路(22)を互いに短絡させる、スレーブ結合ユニット(36)を含んでおり、
 上記マスターユニットは、データ信号を送信するために上記各第1ターミナルの一方に接続された送信ユニット(11)と、データ信号を受信するために上記各第1ターミナルの他方に接続された受信ユニット(12)と、上記障害モードにある2つの上記各第2ターミナル(113、114)を開いて、短絡させ、障害のない通常モードでは、上記各第2ターミナル(113、114)を閉じるマスター結合ユニット(13)とを含んでいる、通信システム。

今日のみどころ

 
 EtherCATを開発したベックオフオートメーション社のリングネットワークに関する発明で、EtherCATの障害切替に採用されている方法だと考えられます。

 装置単体では単純な制御をするだけで、ネットワーク全体の障害耐性を向上することができるアイデアで、すばらしいと思います。単純な制御で大きな効果を出すという、理想に近い形といえますよね。