【特許紹介】車両への複数の制御命令の競合を解決する特許発明(ホンダ)を紹介

 今回は、車両(自動車)への制御命令に関する発明を紹介します。今日も一緒に勉強しましょう。

 従来、車両への複数の信号の間での制御の競合が起きる問題があります。

 この発明のシステムは、通信可能距離が長い通信部が受けた信号を早く処理します。これにより、簡易な動作によって、車両の動作の制御が競合しないようにすることができます。



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車両への複数の信号の間での制御の競合が起きる問題

 自動車のエアコンの制御を、車外のスマホなどの端末によって行うシステムがあります。

 このようなシステムでは、スマホから通信回線を経由して送信された信号、スマホからBluetoothなどの近距離通信によって送信された信号、車載装置から送信された信号の間で制御の競合が起きることがあります。

 このような制御の競合を回避するためには、制御を保留したり、無効にしたりする動作をする必要がありました。

 しかしながら、制御の競合を回避するための動作が複雑になり処理負荷が大きいという問題があります。

通信可能距離が長い通信部が受けた信号を早く処理


 この発明のシステム(車両制御システム)は、簡易な動作によって車両の動作の制御が競合しないようにします。

 車両制御システムは、複数の通信部(第1の通信部、第2の通信部)を介して制御命令を受信することができます。

 第1の通信部と、第2の通信部とが所定時間内に同じ制御対象に対する異なる制御命令を受信した場合には、通信可能な距離がより長い通信部が受信した制御命令を優先して早く処理します。通信可能な距離がより短い通信部が受信した制御命令は、より遅く処理します。

 例えば、先に近距離通信部からエアコンの設定温度を25℃に変更する制御命令を受信した後に、車載ネットワークを経由してエアコンの設定温度を26度に変更する制御命令を受信した場合、先に25℃に設定した後に、26℃に設定することになります。最終的に26℃に設定した状態が残ります。

 このようにすることで、簡易な処理によって、より近い位置から受信した制御命令ほど、より遅く処理されてその効果が残ることになります。

 特許第6837508号 本田技研工業株式会社
 出願日:2019年3月26日 登録日:2021年2月12日

【課題】
簡易な動作によって、車両の動作の制御が競合しないようにすることを目的とする。
【請求項1】
 第1の携帯端末と第1の通信経路で通信する第1の通信部と、
 第2の携帯端末と第2の通信経路で通信する第2の通信部と、
 車両に設けられた複数の制御対象を制御する車両制御部と、
 前記第1の通信部及び前記第2の通信部が受信した制御命令を前記車両制御部へ送信する送信制御部と、
 所定時間内に前記第1 の通信部及び前記第2 の通信部が、同じ制御対象に対する異なる複数の制御命令を受信したか否かを検出する制御命令検出部と、を備え、
 前記送信制御部は、前記制御命令検出部が前記所定時間内に前記同じ制御対象に対する異なる複数の制御命令を受信したと検出した場合、前記車両から離れて通信可能な距離がより長い通信部が受信した前記制御命令を優先して前記車両制御部に送信し、
 前記車両制御部は、前記送信制御部から受信した前記制御命令を、受信した順番で処理して、前記制御対象を制御する
 ことを特徴とする車両制御システム。

今日のみどころ

 車両の制御の競合を、簡易な動作によって解決する発明です。

 以前であれば、自動車のエアコンの制御は、自動車の車内で設定するだけだったので競合の心配はなかったですが、通信技術などの進歩によって自動車がいろいろな通信手段によって端末に接続されるようになると競合が発生することが出てきます。

 このように、例えば、数年前~十数年前であれば心配する必要がなかったことが、ここ数年の技術進歩によって問題になっていることがあります。こういうところに発明のネタがありますよ。