ブロックチェーンを基盤として証券取引をするカストディ支援システムの特許発明(みずほ銀行)を紹介

図1

 今回は、ブロックチェーンを利用する証券取引に関する特許を紹介します。

 従来、海外から国内の証券取引をするカストディサービスで確認処理に多くの時間を要する問題という問題がありました。

 この発明では、各システムが仮想通貨を生成して分散台帳に登録することで、複数の機関で分散台帳の改ざんを防止しながら、カストディサービスが実現します。

 特許第6283719号 株式会社みずほ銀行
 出願日:2016年8月22日 登録日:2018年2月2日



 ※特許の本の紹介。
 特許の申請(出願)をする技術者や研究者が知っておかないといけない特許の知識がわかりやすくまとめられている良著です。

カストディサービスで確認処理に多くの時間を要する問題

 海外の投資家などが国内の証券取引を行うとき、銀行や証券会社が提供するカストディサービスが利用されます。

 カストディサービスを利用する場合、複数の関係者が取引に関与することになります。取引の内容を複数の関係者が確認する場合、確認処理に多くの時間を要するという問題があります。

 一方、特定の機関が証券取引の内容を管理するとすれば、その膨大な取引量を処理するためのシステムの経済的負担が大きくなるという問題があります。

各システムが仮想通貨を生成して分散台帳に登録

図2

 この発明では、ユーザが利用可能な空きエリアが設けられている仮想通貨の取引履歴を管理するブロックチェーンを用いて、カストディ業務を支援します。

 具体的には、投資家と海外証券会社との間で、国内証券の取引が約定された場合に、投資管理システム、カストディアンシステム、海外証券会社システム、国内証券会社システム、証券保管システム(CSDシステム)が、それぞれ、空きエリアが設けられている仮想通貨を生成して分散台帳に登録します。

 それぞれの仮想通貨は紐付け情報が含められていて、紐付け情報を用いて一連の仮想通貨を検索、抽出できるようになっています。

 ここで、仮想通貨は、例えばオープンアセットプロトコルによるカラードコインにより実装することができます。カラードコインは、さまざまな金融資産を記録できるようにしたものです。

 このようにして、ブロックチェーン技術を活用して、複数の機関で分散台帳の改ざんを防止しながら、カストディサービスが実現します。

【課題】
非居住者が関係する証券取引におけるカストディ業務を支援するためのカストディ支援システム及びカストディ支援方法を提供する。
【請求項1】
 投資家の投資管理システム、海外証券会社システム、カストディアンシステム、国内証券会社システム、証券保管システムが、分散台帳にアクセス可能であり、
 ユーザが利用可能な空きエリアが設けられている仮想通貨について、ブロックチェーンにより前記仮想通貨の正当性を確認できる基盤システムを利用して、国内証券の取引を支援するカストディ支援システムであって、
 投資家と海外証券会社との間で国内証券を取引対象とする取引が約定された場合、前記投資管理システムが、約定情報及び、この約定情報に係る一連のトランザクションを複数の仮想通貨を用いて取得するための取引識別情報を前記空きエリアに記録した仮想通貨を生成して前記分散台帳に登録し、
 前記カストディアンシステムは、前記空きエリアに記録された取引識別情報に基づいて取得した仮想通貨に記録された取引内容を確認し、前記取引対象の残高の確認情報及び取引識別情報を前記空きエリアに記録した仮想通貨を新たに生成して前記分散台帳に登録し、
 前記海外証券会社システムは、前記空きエリアに記録された取引識別情報に基づいて取得した仮想通貨に記録された取引内容を確認し、前記取引対象の残高の確認情報及び取引識別情報を前記空きエリアに記録した仮想通貨を新たに生成して前記分散台帳に登録し、
 前記国内証券会社システムは、前記空きエリアに記録された取引識別情報に基づいて取得した仮想通貨に記録された取引内容を確認し、前記取引対象の残高の確認情報及び取引識別情報を前記空きエリアに記録した仮想通貨を新たに生成して前記分散台帳に登録し、
 前記証券保管システムは、前記国内証券会社システムが登録した仮想通貨を、前記空きエリアに記録された取引識別情報に基づいて取得し、前記仮想通貨に記録された取引内容を確認し、前記取引の決済を行ない、前記取引対象の振替完了情報及び取引識別情報を前記空きエリアに記録した仮想通貨を新たに生成して前記分散台帳に登録することを特徴とするカストディ支援システム。

今日のみどころ

 ブビットコインの取引を記録するデータベースを実現しているブロックチェーンの技術を利用したカストディサービスの支援システムです。請求項の記載は、一見複雑に見えますが、カストディアンシステムなどの複数のシステムが順次に仮想通貨を生成して分散台帳に登録することが記載されており、シンプルです。

 銀行もブロックチェーンを利用した技術に着目しています。特に海外とのやりとりでの改ざんなどの不正を防止するのに威力を発揮できる期待がありますね。すばらしい。