共振タグを用いる小型化可能な温度計測システムの発明 村田製作所

 温度計測システムにおいて、経時変化を影響をなくす補償回路のせいで共振タグを小さくできない問題を解決する発明です。

 この発明の共振タグは、残響信号と製造年月日のデータをRFIDで送信します。そして受信側で、発信子の共振周波数の温度特性、経時変化特性を用いて温度を算出します。補償回路を共振タグに備える必要がなくなり小型化可能になります。

 特許第6032355号 株式会社村田製作所
 出願日:2014年4月21日(優先日:2013年5月9日) 登録日:2016年11月4日

経時変化を影響をなくす補償回路のせいで発信機を小さくできない問題

 人(被験者)の体温などを、その人に触れないで計測する計測システムが開発されています。例えば、温度によって共振周波数が変化する共振子(例えば水晶振動子)を用いるものがあります。このシステムでは、共振子が発する信号を無線で受信して、その信号の周波数から温度が求められます。

 しかし、水晶振動子の共振周波数の温度特性は経時変化するので、経時変化の影響をなくすための補償回路が発振タグ内に必要でした。

 この場合、補償回路や、補償回路を動作させるための電源などの構成が発振タグ内に必要となり、発振タグを小型にすることができないという問題があります。

残響信号と製造年月日を無線で送信して温度を求める

 この発明のセンサシステムは、共振子を備える共振タグと、共振タグと無線通信するリーダ(リーダモジュール)とを備えています。
 
 共振タグの中の共振子は、温度によって異なる共振周波数をもちます。そして、リーダから電波によって励振信号が送られてくると共振子が共振し、残響信号を電波によってリーダに返します。また、RFIDの通信によって、共振子の製造年月日をリーダに送信します。製造年月日は、請求項1の共振タグ情報の一例です。

 リーダは、共振子の製造時の共振周波数と温度との関係テーブルを持っています。また、共振子の共振周波数の経時変化特性ももっています。そこで、共振タグから受信した残響信号の周波数から、RFID経由で受信した製造年月日と現時点の年月日から得られる経時変化を加味した共振周波数を求め、関係テーブルを参照して温度Tを求めます。

【課題】
共振タグを大型化することなく、共振子の共振周波数の経時変化特性に依存する物理量の計測誤差を抑圧することができる、無線式センサシステムを提供する。
【請求項1】
 周囲の物理量に応じて共振周波数が変化する共振子およびRFIDを備えた共振タグと、
 前記共振子を励振する励振信号を送信し、該励振信号に基づく残響信号を受信する計測用信号送受信部、該計測用信号送受信部で得た前記残響信号に基づいて物理量の計測を行う計測部、および、前記RFIDと通信を行うRFID通信制御部を備えたリーダモジュールと、
 を備え、
 前記RFIDは、前記共振子の共振周波数の経時変化特性に依存する前記物理量の計測誤差に関連する情報である共振タグ情報を記憶し、
 前記RFID通信制御部は、前記共振タグ情報を前記RFIDから取得して、前記計測部に与え、
 前記計測部は、前記共振タグ情報と前記残響信号に基づいて、前記物理量の計測を行う、
 無線式センサシステム。

今日のみどころ

 この発明の計測システムでは、計測した周波数(残響信号)の温度特性と経時変化特性を考慮して、温度計測の精度を確保しています。また、被験者に装着される測定器を小さくして、利便性を高めています。おそらくこの測定器は、常に被験者が身に着けることも想定されているのだと思います。こうしておけば、計測の時間にスタッフが被験者の近くにリーダモジュールをもっていくだけで体温が計測できて便利です。

 製品の用途が具体的に定まっていると、課題が明確になり、解決方法も具体的になり、特許が取りやすいです。逆に言うと、技術の基礎研究などでは、製品としての具体的な使われ方が絞り切れない、又は、しぼりたくない場合がありますよね。それでも、なんとか具体的な課題を想定すると、具体的な解決方法も見えてくることもあります。

 なお、詳細な説明が見当たらないのですが、振動子を励振するための励振信号や、振動子が出力する残響信号の波形をそのまま電波として送受信するようです。この点が技術的にちょっとおもしろいですよね。